受験シーズンが近づくと、風物詩のようによく聞こえてくることがあります。
それは、「落ちた・滑ったとか言わない!」という一種のゲン担ぎです。
そうした禁句(?)に限らず、「カツ丼で勝つ!」と食べ物を絡めるケースなど実に多様です。食事絡みのゲン担ぎの場合は、試験を受ける当事者だけでなくその家族などにも関わってきます。
ですが、パフォーマンス面から考えた場合、果たしてそのようなゲン担ぎは本当に効果的なのでしょうか。

当記事はゲン担ぎを否定することが目的ではなく、むしろ望ましくないゲン担ぎを見直して改善することが狙いです。
ゲン担ぎとは:縁起の良し悪し、過去の成功体験
まず、ゲン担ぎという言葉には、主に2つの意味があります。
第一に、縁起の良い物事や行動を取り入れて、縁起の悪い物事を忌避する、と言った意味合いです。
例えば、「カツ丼を食べて勝つ」と言うのもまさに縁起の良い語呂合わせです。
逆に、「落ちる」という言葉や現象は、「試験に」落ちることが連想されて縁起が悪いことから忌避されるということです。
第二に、以前に成功した時と同じ行動を取るという意味合いもあります。
例えば、スポーツ選手などが大会前にヒゲを剃らずに出場したら成功を収めた→だから次回以降の大会もゲンを担いでヒゲを剃らずに臨もう、といった具合です。
これはいわば、成功体験をゲン担ぎに紐付けているようなものです。
当記事で疑問を提起するのは、主に縁起の良し悪しの方のゲン担ぎです。
ただし、第二のパターンでも、毎回コロコロ変えてしまうようなケースは望ましくないと考えます。
具体例:「物が落ちる・滑るは禁句」は逆に不安を煽るだけ
冒頭でも述べたとおり、試験本番シーズンの直前期になると急にゲン担ぎの禁止ワード(?)のようなものが流布し始めることが多いでしょう。
実際、私自身が受験生だった時も、まるで都市伝説のように広まっていたものです。

あっ、ペンが落ちた。「落ちた」……試験、大丈夫かなあ。

「落ちた」とか縁起でもないから言わないでくれ。

落ちる……どうしよう……。不安になってきた。
ロジックとしては、「落ちる」「滑る」というワードが「試験に落ちる」「試験に滑る」ことを連想させるから不吉である、ということかと推察されます。
もっとも、事の本質は不吉云々ではなく本人のメンタルの問題であることがほとんどのように見受けられますが。

私は昔からそのような禁句や連想など一欠片すら意に介さないタイプでしたので、全くの他人事として客観的に眺めていました。
同級生たちを客観的な立場から観察していて、気付いたことが2点あります。
第一に、彼らは平常時では私と同じように全く意に介していなかったにもかかわらず、受験シーズンの直前になっていきなり言い始めた、ということです。
その禁止ワードが本当に不吉であると言うならば、なぜ平常時では全く気にせず使っていたのでしょうか。
※普段からマイルールとして「常に」守っているならば話は変わりますが、それでも余計に狼狽していてはメンタル的にマイナスではないでしょうか。
第二に、彼らはその禁句を気にすることによって余計な不安や恐怖を自家培養しているだけにしか見えない、という点です。
最初から冗談半分で言っているだけの人であれば特に気にする必要は無いでしょう。むしろ一種の受験ネタとして談笑に使っているようにすら思われます。
ですが、そうでない人というのは、「落ちる」「滑る」という言葉に過剰反応するあまり自分でネガティブな自己暗示を掛けているようにしか見えません。少なくともポジティブなメンタル状態には見えません。
もちろん、「それでも縁起が悪いから避けたい」と考えるのもまた各人の自由です。
ですが、「果たして本当にそのゲン担ぎはポジティブな効果をもたらしているのか」という点はよくよく省みたほうが良いです。

これは私見ですが、それほど試験が不安ならば不安感が拭えるまで勉強すれば良いだけではないでしょうか。

……容赦ない火の玉ストレートだ。
ゲン担ぎは試験本番直前で急に始めない

そうした観察を通して、私は以下の2点が重要であるように思います。
- ゲン担ぎをやるならば不安感に流されて急に本番前に始めない。
- 負の感情に流されるのではなく、自分自身のメンタルをポジティブな方向に誘導する
感情的なゲン担ぎから意識的なメンタルコントロールへ
例えば、プロフェッショナルこと本田圭佑さんはピッチに入る際に必ず以下のようなゲン担ぎを行なっています。
「あぁそうだ、げんかつぎやジンクスとはちょっと違うかもしれませんけど、試合開始前、ピッチに入るときに左足にポンと触るのは必ずやっていますね。“頼むぜ”とか、“よろしくな”というイメージです。げんかつぎといったら、それくらいだと思いますね」
本田さんのゲン担ぎの場合は、小さな試合であろうと重要な国際試合であろうと常に意識的にやっているという点がポイントです。
これはいわばルーティンと同じように、「どんな試合でも同じゲン担ぎをすることで、普段の試合と同じようなメンタルに誘導する」という機能があるように思われます。
少なくとも、受験本番前になって俄かに始めるゲン担ぎとは全くの逆であると言えます。
ゲン担ぎというものは、決して本番直前のプレッシャーや不安に飲まれて反射的にやるべきものではないと私は考えます。それはまさしく感情的な反応であり、意識的にメンタルをコントロールするという発想とは真逆の行動です。

加えて、本番への特別感を強めることで更にアガってしまう可能性すらあります。
ゲン担ぎをするならメンタルをポジティブな方向へ誘導する
また、ゲン担ぎをするならばネガティブな方向に囚われないということも大切です。
先ほど挙げたような「落ちる」「滑る」というような禁句は、恐らくは当人的にはネガティブなイメージを遠ざけようとしているものと思われます。
しかし、端から見ていると、むしろそうした禁句を神経質に気にすることで逆に「落ちる」「滑る」という言葉に強くフォーカスしているように見えます。もっと言えば、わざわざマイナスの自己暗示を掛けているように見えます。
そのようにネガティブなワードに集中できるのであれば、逆に自分にポジティブな影響を与えるような言葉に集中することも出来るはずです。
単純な話だと、「勉強して合格する」と言うシンプルなモットーを持ってみるのも良いかも知れません。
それが出来ないで禁句にナーバスになっているのであれば、それこそがまさしくネガティブな感情に囚われた状態なのではないでしょうか。
悩むな、考えろ―本田圭佑名言に学ぶ、悩み事の解決は囚われない心から|時事・社会・ビジネス③

いっそのこと、修造さんのように常に「できる!」と自己暗示を掛ける方が良いのでは、と第三者的には思います。

頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるって!やれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る!

色々な意味で吹っ切れそうですね。
受験生の勝負メシで考えるべき問題
ゲン担ぎに勝負飯?食べ物にはアレルギーや胃腸の問題も
ゲン担ぎと言えばカツ丼というように、本番前に何か特別な食事を摂るというのもよく言われることです。
いわゆる勝負飯です。この点は、受験生本人だけではなく親御さんにも強く関わってくる要素です。
ですが、本番前だからと言って普段食べ慣れていない食事を摂るのはハイリスクです。これは、気合を入れて奮発すればするほどリスクが拡がります。
これは単純な話で、普段食べていない食事というのは経験則から良し悪しを判断することすらできないからです。
例えば、同じカツ丼でも、勝負飯だからとボリュームも中身の具材も大盤振る舞いをしたとします。
ですが、普段食べ慣れていないがゆえに深刻な胃もたれを引きずってしまったら泣くに泣けません。

フィジカルコンディションという側面から言えば調整失敗です。
こうした食事の問題は、ゲン担ぎに限った話ではありません。
例えば、本番前に奮発して高級うなぎ料理店に行って、生まれてはじめて山椒を掛けて食べたところ、そこで初めて重度の山椒アレルギーに気付いたとすれば時既に遅しです。(※食物アレルギーはあらゆる食材で起こりえます)
あるいは、ストレスで過敏性腸症候群が生じていたとすれば、その「奮発した勝負飯」が原因で更に症状を悪化させてしまう可能性もありえます。
加えて、メンタル面ではルーティンの「普段通り」という発想と逆行します。
よほど可能性の低い試験に一発逆転を懸けて望むならばさておき、特別感を高めることで逆にアガってしまっては本末転倒です。
こうした諸々の理由から、いきなり試験本番前に初めての食事を摂るのはオススメしません。
勝負飯を取り入れるのであれば、事前に同じメニューを何回か試してみて問題が生じないか観察してから判断すべきであると考えます。
むしろ低糖質食の方が受験生のメリットに
以前の記事で、試験のリラックスに役立つアメ玉ルーティンについてご紹介しました。
その記事の中で、糖質中毒が試験に及ぼすデメリットについて取り上げました。
「眠気やだるさは、昼食に糖質をたっぷりとって急上昇した血糖値が、その反動で急激に降下し、低血糖状態に陥ったために起こっているのです」(中略)
これがまさに「糖質中毒」の状態だ。糖を食べてハイになり、糖がなくなると気分が落ち着かず、集中力が欠ける。
牧田医師は「血糖値が下がると脳細胞の働きが悪くなり、思考力、集中力、認知力が下がります。ちょうどいい血糖値の値は70~140mg/dl。血糖値を上げないように食べることが、脳の働きを良くするためには大切」という。
(中略)
そもそも、糖をとりすぎる生活は、生活習慣病である2型糖尿病の原因だ。高血糖状態が続くことでインスリンの分泌異常が起き、結果的に細胞に糖をとり込めなくなる。まさに脳でも、同じことが起きると熊谷医師はいうのだ。
受験生の中には、「糖をたくさん取り込むことで脳にエネルギーが行って頭の回転が良くなる」ようなイメージを持たれている方も多いかも知れません。
ですが、糖質中毒について考えると、むしろイメージとは真逆であるということになります。
よって、試験日にはなるべく低糖質な食事を摂るほうがオススメである、と言えます。カンタンに言えば、ガッツリと炭水化物や糖分を摂りすぎないということです。

なら、試験日だけ断食した方が良いってこと?

いえ、糖質を減らすなら時間を掛けて少しずつ減らし、ちょうど良い食習慣を見つけて本番に臨む、ということです、
まとめ:「普段通り・練習通り」の大切さ
当記事で述べたかったことは、ゲン担ぎそれ自体の良し悪しというよりも、「いかに練習通りに本番に臨むか」ということの大切さです。
くれぐれも、試験前に不安や焦り、プレッシャーといったネガティブな感情の赴くままにアレもコレもとゲン担ぎに手を出すのはオススメしません。
実のところ、ゲンを担いでいるようで、実際はネガティブな感情に振り回されているだけにしか見えない受験生も散見されます。
ましてや、ネガティブな物事に逐一反応するあまり、逆にネガティブな感情を自分で助長してしまっては本末転倒です。
むしろ、そうした試験のパフォーマンスの阻害要因になるネガティブな感情それ自体を鎮めることこそが必要ではないでしょうか。
そのためにゲン担ぎをやるならば、直前期ではなく普段からルーティンやリラックス法を習得するのが効果的です。
あるいは、日頃から意識のスイッチの切り替えとしてやるというのも一つです。
勝負飯にしてもゲン担ぎにしても、毎日とはいかずとも、せめて模擬試験や定期試験などでは毎回活用するくらいの意識でやれば良いのではないでしょうか。(それを実践している例が一流アスリートです)

目的は「試験で1点でも多く得点すること」です。ゲン担ぎも勝負飯もメンタルコントロールも、そのための手段です。
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