心情の変化が物語文の解き方のコツ!登場人物の心情描写、転換点と理由|論理的思考のコツ㉗

物語文、心情変化のターニングポイントロジック本質講義~国語・英語・長文読解のコツ

 

当シリーズ「論理的思考のコツ・本質講義」では、『国語はロジック』という発想のもとで解説を進めてきました。

 

これは、物語文でも同じ話です。

物語文は、論説文とは異なり登場人物の主観的な心情を中心に文章が綴られていくことが多いです。そのため、「物語文はセンス」と思われがちです。

 

ですが、物語文こそ本文の論理的な分析が大切です。

物語文においては、よく「登場人物の心情の変化を押さえましょう」という説明があることと思いますが、これはセンスではなく文章の文言から心情を解釈するということです。

 

当記事では、そうした物語文形式の長文読解問題を攻略するポイントについてご紹介していきます。

 

ポイントを押さえて演習していけば、センター国語も9割から満点で安定します

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前提:「登場人物の心理描写」≠「あなたの感想」

 

まず、物語文の苦手な方にもっともありがちなケースは、「登場人物の心情」と「自分の感想」を混同してしまうことです。

 

例えば、以下のような例文があったとしましょう。

タダシくんは物心ついた頃からサッカーの練習に明け暮れていた。必死に自分を追い込んで努力し続けた。だが、高校最後の県大会決勝、最後のアディショナルタイムで失点し敗退した。

「このときのタダシくんの気持ちを答えよ」という問題があったとすれば、どのように考えるでしょうか。

 

これは……タダシくんはさぞショックを受けたことでしょうね

悔しすぎてしばらく立ち直れないだろうな。

国語的には、それこそが本文と無関係な「あなたの感想」です

 

上記の例文だけでは、タダシくんの気持ちは何も分かりません

なぜならば、この例文は単にタダシくんを取り巻く客観的な事実について説明しているだけであって、このときのタダシくんの気持ちについては何の描写もされていないからです

 

それでは、先ほどの例文が仮にこのように続いたとすればどうでしょうか。

全国大会の切符を手にできなかったタダシくんは、それでも、不思議と心は晴れやかだった

 

……なんで負けて晴れやかなんだ?意味がわからない。

あなた自身がどう考えようと、「不思議と心は晴れやかだった」と本文で心理が描写されているならばそれが答えです

 

まずは第一に、本文に書いてある登場人物の心理描写」と「あなた自身の感想」を切り分けて考えなければ、運任せの読解になってしまいます

なぜならば、「あなたの感想」が本文と一致する時というのは単なる偶然に過ぎないからです。

 

※なお、この点については別の記事で特集しています。

筆者の考えとは問題文中での記述が全て!それはあなたの感想ですよね|論理的思考のコツ⑥

 

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ターニングポイントでの心情の変化、展開、読解のコツ

 

それでは、物語文において最重要であるターニングポイントを中心に、長文読解問題の核心部分を解説していきます。

 

物語文のメインテーマは「ターニングポイント」にあり

 

以上の前提が理解できれば、「物語文は登場人物の心理描写を中心に解釈する」というポイントも掴めるかと思われます。

 

そこで重要となってくるのが、登場人物にとってターニングポイント=転換点となるような出来事です。

先ほどのタダシくんの例で言えば、必死の努力も報われず全国大会の切符を失った出来事がそれです。『走れメロス』であれば、メロスが諦めかけたところから覚醒して再び走り出す部分です。

あるいはもっと日常生活が舞台の作品であれば、そのような大きなイベントではなく、登場人物が何かしらの体験を通して気付きを得るようなプロットもありえます。

 

これらは、いわゆる話の山場であり、あるいは起承転結で言うところのの部分でもあります。

論説文では筆者の主張が本文の主旨(メインテーマ)となりますが、物語文の場合はまさにこのターニングポイントが中心となります

 

ターニングポイントの前後で登場人物の心情が「どう変化したか」

 

こうしたターニングポイントでは、登場人物の心情が大なり小なり変化することがほとんどです。

 

前半部で挙げた例文を再掲してみます。

タダシくんは物心ついた頃からサッカーの練習に明け暮れていた。必死に自分を追い込んで努力し続けた。だが、高校最後の県大会決勝、最後のアディショナルタイムで失点し敗退した。
全国大会の切符を手にできなかったタダシくんは、それでも、不思議と心は晴れやかだった

 

タダシくんにとってのここでの一番のターニングポイントは、「高校最後の県大会決勝、最後のアディショナルタイムで失点し敗退した」ことです。

このターニングポイントを受けての心情は、「それでも、不思議と心は晴れやかだった」と描写されています。よって、ここの心理描写をチェックします。

問題用紙であれば実際に該当箇所をマークします。線を引いても良いですし、重要ポイントは四角囲みしても良いですし、何かしらの記号を付けても良いです。

 

「では、そのターニングポイントでどのような心情からどのような心情に変化しましたか?」というのが重要論点です

 

例えば、本文の前の部分を読んでみると、このような描写があるかも知れません。

タダシくんは、成功に囚われるあまり、ただただ苦しんでいた。大好きだったサッカーが、いまでは苦悩の種となっていた。

 

そうすると、ターニングポイントを挟んだ「苦悩→惜敗→晴れやか」という心情の変遷が分かります。そして、ここが物語上の山場であるわけですから、国語の試験でも重点的に問われる部分であるということになります。

 

こうした変遷を長文の中で追うためには、結局は登場人物に関わる描写を一つ一つチェックしていく必要があります

 

登場人物がその心理・感情・行動に至った「原因・理由」

 

そうして登場人物の内面や行動を掴んだら、次はそうした感情や行動に至った原因・理由も必ずチェックしておきます。

 

先ほどの例文を見てみましょう。

タダシくんは、成功に囚われるあまり、ただただ苦しんでいた。大好きだったサッカーが、いまでは苦悩の種となっていた。

ここでは、タダシくんの「苦悩」の感情が描写されているということは分かるかと思います。そのままストレートに書かれています。

 

加えて、「成功に囚われるあまり」とも書かれています。

つまり、「成功に囚われる」ことが原因となって「苦悩」という感情の結果が生じている、と言えます。

成功に囚われる→だから苦しんでいた、苦悩の種

 

成功に囚われるな、成長に囚われろ。

 

あるいは、「タダシくんはロッカーを叩いた。」というような行動が描写されていたとしましょう。

そのような場合も、その行動に至った理由が描写されていれば必ずチェックしましょう。

 

タダシは自分の不甲斐なさに怒っただからロッカーを叩いた
タダシはチームメイトの気の抜けたプレーに怒っただからロッカーを叩いた

こうした「行動の理由が具体的に何か」というのも、本文に描写されている内容が全てです。読み手の空想とは無関係です。

 

※なお、因果関係については別記事で特集していますので、「よく分からない」という方は是非ともご参照ください。

 

あとは小さな出来事の積み重ね、それがクライマックスに繋がる

 

以上が、物語文を読み解くための核心部分になります。

 

それに対して、問題文が長文になるほど、比較的小さな出来事の描写が積み重ねられていくことになります。

タダシくんの例で言えば、普段の練習中での「チームメイトとの確執」や、プライベートでの「将来選択の葛藤」といった場面も描写されているかも知れません。

 

これらは、ターニングポイントという大きな波につなげるための小さな波の集まりであると言えます。そうして物語の展開が作られていくわけですから、小さな波それぞれの解釈も進めていけば良いということです。

 

そうした小さな波の解釈のコツというのは、ここまでのターニングポイントで考えるべきことと同じです。

ですので、まずは一番大きく分かりやすいターニングポイントから読解のコツを掴むことです。そうすれば、小さな出来事それぞれに対する読解力も向上していくことでしょう。

 

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物語文の読解での注意点、具体的な情報整理の仕方

 

前半部は、物語文を読解するためのコアの部分を解説してきました。次は、読解の際の注意点について説明します。

 

登場人物ごとに情報を分ける~会話主や人物描写、心理描写

 

物語文において、必ず注意すべきポイントがあります。

それは、登場人物ごとに情報を分けて考えるということです。

 

例えば、ある2人の会話文があったとしましょう。

A「おい!もっと本気でサッカーに取り組めよ!」
B「まあまあ、落ち着いて。もっと楽しくやろうよ。」
A「練習は遊びじゃないんだぞ!」

 

この時、それぞれの発言の会話主を取り違えると問題の答えが全く変わってしまいます

 

例えば、正誤問題で「タダシくんは平静を保ちつつサッカーの練習を楽しむよう言った。」という選択肢があったとします。

この選択肢は、「タダシくんは」という1点を除けばBの会話内容と一致しますが、Bの会話主がタダシくんでなければ誤りとなります。

 

これは、心内文や行動描写、心理描写においても全て同じです。つまり、主語が変わるだけで答えも全く変わるということです。記述問題であれば、主語の読み間違いは即0点レベルの誤読と思っておいた方が良いです。

だからこそ、何となく本文に書いてあるっぽいから」という感覚的な理由で問題を解いてはいけないのです。

 

大事なことなのでもう一度述べますが、物語文では登場人物を分けて情報整理することが大切です。作品全体を通して人物描写を区別できていれば、前後の文脈から「それが誰の会話・描写なのか」も特定できるはずです。(学力試験である以上は)

よく分からなければ、本文に主語が誰かを逐一書き込んでいくのも有力な手段です。会話文も、ゲームのように発言主が書いていませんので、文頭に誰の発言か記録していくと良いでしょう。

 

※なお、こうしたコツは古文でも絶対必須の技術です。

古文の解き方のコツは敬語!主語・目的語の省略を尊敬語・謙譲語で識別する|論理的思考のコツ㉒

 

時系列ごとに場面を切り分けて考える

 

物語文に特徴的なもう一つの要注意ポイントは、時系列ごとに場面を分けて考えるということです。

 

例えば、本文が以下のように場面転換していったとしましょう。

①舞台設定の説明→②サッカー練習パート→③タダシ個人の苦悩パート→④試合本番パート→⑤エピローグ

 

ここで、③の場面に下線部が引かれて「この時(=③)のタダシくんの内面について正しい選択肢を選べ」という問題が出たとしましょう。

そうすると、④や⑤の場面での心理描写について説明した選択肢は誤りとなります。たとえ本文をそのまま抜き出していたとしても誤りです。

なぜなら、「③の場面における」タダシくんからすると、④や⑤の場面は未来の出来事だからです。

 

物語文においては、時間や場所が変わると話も変わります。だからこそ、これらを分別して情報整理することが求められます。

 

なお、登場人物を分けるのと同じように、場面の転換が分かるように直接メモしていくのも有効な訓練です。

カンタンなのは本文中で場面が転換する箇所に区切り線を書く方法です。大抵は形式段落の間になりますが、途中で一部分だけ別の場面に話が飛ぶケースもありえます。

とにかく各場面の違いが自分なりに分かるようにマークすれば良いのですが、「この場面はどのような場面なのか」について一口メモも書いておくのがオススメです。良い読解訓練にもなります。

 

なお、場面④において「実は場面③の時にこのようなことも考えていた」と後付けで説明されていれば、その記述も場面③の話に含まれる可能性があります。あくまでも個別具体的に判断することが前提です。
ただし、そのようなトリッキーな問題は難易度も高くなりますので、まずは基本レベルから読み方を理解していくことが先決です。

 

物語文でも語彙力や知識は大切、物語特有の表現

 

最後に忘れてはならない点は、物語文でも語彙力が大切になるということです。

 

例えば、「タダシくんは自分の目を疑った」と書いてあれば、目の前でタダシくんにとって信じがたいことが起きたことを意味します。

空には暗雲が立ち込めていた。」と書いてあれば、将来的に何かしらのネガティブな出来事が生じることを暗示した表現となります。これは「暗雲が立ち込める」というお決まりの表現であり、知識の問題です

 

あるいは、天気が描写された際に、その天候状況が主人公の心情の暗喩(メタファー)となっているケースもよくあります。

例えば、「どんよりと曇っていた」という描写が、そのまま主人公の曇った心情を表現しているようなケースです。本来は自然現象である気象と主人公の心情は全く別物であるはずですが、文学国語では一種のお決まりのパターンである、と言えます。

こうした表現は論理国語の視点から見ると実に分かりにくい部分ですが、少なくとも試験においては、「本文に書かれてある文言が解答の根拠になる」という点は物語文でも変わりません。

(※本当にただの天気の説明である可能性も当然ありますが、入試問題等ではそのように解釈の判断できない箇所を設問に絡めることは考えにくいです)

 

このように物語文で出てくる表現というのは、論説文における語彙や知識とはまた毛色が違ってきます。

ですが、論説文における語彙力と同じように、そうした物語文に特有の表現も知識として習得していくことが必要です

「論説文でよく分からない言葉が出てきたらググって調べる」のと同じように、物語文でも知らない表現が出てきたら必ずその都度調べるべきです。特に問題に関わるような表現であれば、大抵はググればすぐ見つかるような定番の表現であることが多いです。

 

なお、語彙力の磨き方については別記事で特集しています。

語彙力を鍛える方法は『ググる習慣』!ネット検索で日常から知識力を深める教養生活|論理的思考のコツ②

 

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まとめ

 

物語文において中心となるのは登場人物です。

そして、ターニングポイント=転換点において、登場人物の心情が大きく変化することがほとんどです

 

このターニングポイントこそが物語文における核心部分であり、登場人物の心理描写、行動や感情の原因・理由、変化について綿密にチェックしていくことが大切です。

まずはこの大きな波であるターニングポイントから理解する訓練を進めていきましょう。各場面における小さな出来事も、読み方はほぼ同じです。

 

加えて、登場人物ごと時系列・場面ごとに情報整理することも大切です。

単に「本文に書いてあるのと同じワードだから○」ではなく、物語文でも本文を情報として分析していくことが重大なカギとなります。

物語文もロジックが大切なのです。

 

まずはこうした分析を実際に問題用紙にメモしていくことが国語上達の第一歩です。

 

※当記事と関連する特集はコチラ

国語で作者の気持ち?行間を読む?読解問題は本文こそが解答の根拠!|論理的思考のコツ⑤

筆者の考えとは問題文中での記述が全て!それはあなたの感想ですよね|論理的思考のコツ⑥

因果関係の意味を具体例で簡単に解説!原因と結果、相関関係との違い|論理的思考のコツ⑭

 

※連載シリーズ①「ロジック基本講義(国・英・長文読解)」→ 各話リスト

※連載シリーズ②「効率的な勉強法」→ 各話リスト

 

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