国語でも英語でも、長文読解の問題では「設問先読み」派か「本文先読み」派かでスタンスが大きく分かれることと思います。
いずれのやり方にしましても、既に結果が出ているならば各々に合ったメソッドということですからそのまま続けるのが良いかと思われます。
しかし、なかなか結果が出ずどの解答順序が自分に合っているか迷っている方にとっては切実な問題です。

あるある過ぎて困る。結局どのやり方が正しいんだ?っていう。

どの方法が正解かという話ではありませんが、私は『本文先読み』派です。私がそう考える理由を論理的に解説していきます。
当記事は、解答の順序を決めかねて困っている方へのキッカケとして、私が個人的に推奨している『本文先読み』を後押しする内容となっています。
なお、注釈は本文の補足説明ですので本文に含めて考えます。
本文読解・設問解答の順序4パターン
まず、今回のトピックにおいては、以下の4パターンのスタンスに分かれるかと思います。
- 本文を先に1周通読してから設問に着手する。(私のスタンス)
- 本文を先に読み、下線部に当たるたびに設問に当たる。
- 設問を軽く流し読みしてから本文読解に着手する。
- 設問を先に読んで、そのまま解答の作業に着手する。

これらのパターンごとに解説していきます。
「設問先読み・そのまま解答」は高度なパラグラフリーディングが必要
まず、設問から先読みしてそのまま問題を解き始める方法が挙げられます。
この方法は、一見すると最も速くて合理的な方法のように思われがちです。
しかし、この解き方の最大のハードルは、パラグラフリーディングの高度な能力が前提という点です。
なぜなら、解答に必要な根拠を本文から『ピンポイントに』探すためにはマクロ視点から文の構造やロジックを把握する必要があるためです。
つまり斜め読みで解答の根拠を見つけ出せる程度の能力がないと効率化になりにくいということです。

これは、前回記事でサイト構造に例えたのと同じような話です。

ああ、ソシャゲーの攻略サイトで新イベントの回り方をピンポイントに見つけ出すって話か。まあレイアウトを見りゃ分かるしなあ。

長文読解がまさにその「見れば分かる」レベルかという問題です。
もしここで『一文一文をバラバラに精読して根拠を探す』ような読み方になっているならば、最初から本文を順序通り読み進めてロジックを分析していった方が合理的です。
筆者も読み手が順序通り読むことを想定して意図的に文章構成しているのが普通であり自然の流れです。それならば、その流れ通りに読むのが結果的に最も分かりやすい順序であることになります。

どういう意味?

『設問から解く方法』ってのは本文から要領良く解答を抜き出すのが目的のはずなのに、結局本文をあっちこっち飛び回って迷ってたら要領悪いよねってことじゃないの。

そのような場合は、次に紹介する「設問を軽く流し読みしてから本文読解に着手する」方が結果的に効率は上がると思います。
前回記事では、パラグラフリーディングはあくまでも『精読』する能力が前提であり、結局はミクロ・マクロ両視点が必要であると述べました。
逆に、もしそれだけの能力が備わっているならば、普通に本文のロジックを最初から読み進めていけば解答は自ずと導けるはずです。
※なお、「長文読解の根拠は本文から抜き出す」という国語・英語の大原則の部分にピンと来ない方は是非とも過去記事から読み進めてみてください。
「設問を先に軽く流し読み」は引っかけなどの『先入観』に注意
次に、設問を先読みするが、軽い流し読みに留めておいて本文読解に入る解き方です。
これにより、択一問題であれば文章のだいたいの話題がつかめ、記述式であればどのような切り口から問われているかが先に分かります。
この方法は、一見すると効率的に思われます。
しかし、この解き方には、『先入観』という看過できない問題があります。
例えば、択一問題の場合です。
たしかに、選択肢の文から、本文で挙げられるトピックはだいたい分かるかも知れません。
しかし、ここで「最も適当なものを選びなさい」という問題であれば、残りの選択肢は全て誤りを含むということになります。
選択肢の誤りの部分が頭に残ってしまうと、本文読解においては誤った先入観につながりかねません。頭に残っていないと自分では思っていても、潜在意識下で残ります。
特に厄介なのは、問題作成者が『受験生の引っかかりやすそうな』選択肢を意図的に混ぜて釣るケースです。
大抵は、『本文に出てくる単語をそのまま使いつつ論理をズラす』、あるいは『常識的な考えだが本文とはズレている』ような選択肢です。
そのような試験問題では、設問先読みをすると本文読解の時点でむしろ誤りの選択肢の内容に釣られやすくなります。
ここで逆に「誤りの先入観に気をつけよう」と注意をしつつ本文を読むのは、脳の『メモリの無駄遣い』になります。

なら「誤りの選択肢を選びなさい」って問題なら良いのか。

各人の方針にお任せしますが、それでも一つは誤りになります。

ただ、「残りの選択肢は正しい」というのは捨てがたいですね。

私には「一つは誤り」という留意こそが『脳のメモリの無駄遣い』につながると感じます。それよりも本文読解にメモリを全て割り当てて1周の通読で全体をより正確に把握する方が私にとっては合理的です。

それって1周読んで分かってしまう能力者限定の話じゃ……?

むしろ精読・読解力の育成段階こそ先に通読して内容理解を優先することを勧めます。その上でどの解き方を実際に利用するかは本番対策の中で自己分析した上で判断するのが良いです。
なお、記述式の問題の場合でも『先入観』『脳のメモリ』の話は同じです。
例えば理由を問う問題であれば、「なら単純に理由に注意して読めば分かるんだな」ということにはなりません。
一定以上のレベルの問題であれば、「一つ前の文が答え」であるとか、本文に「理由は○○である」とそのまま書いてあるといった単純な問題は期待できません。そのような問題では点差が付きにくいからです。
本文がどのような論理展開、文章構造になっているかは筆者次第ですので、どのような設問にせよ結局は論理的思考が必須になってきます。

本文・注釈以外の情報をシャットアウトすることで脳の『メモリの無駄遣い』を減らす方が効率的というのが私の経験上の考えです。
ちなみに、パラグラフリーディングの能力が向上すれば、設問の方ではなくむしろ先に「本文を」流し読みすることで大筋を掴むことができます。
※なお、古文は「先に設問や注釈からピンポイントにヒントを拾う」方がオススメです。古文全般については次の記事で解説します。
※また、引っ掛け要素のない素直な試験であれば、設問先読みも有効です。ただし、長文読解の試験で分かりやすい問題を作ると難易度が格段に下がってしまうため、受験国語・英語ではあまり見かけないかも知れません。
「本文先読み、下線部で設問へ」:本文分析に支障が無いか要注意
続いて、本文を先に読んで下線部に突き当たったら設問を解く方法が挙げられます。
このような方法をとる理由は、おそらく本文の内容がワーキングメモリーにフレッシュに残ってるうちに設問を解くためではないかと推測します。(ワーキングメモリーというのは、単純な短期記憶ではなく脳内で様々な作業を行なうための一時記憶領域のことです。)
先ほどの『脳のメモリの無駄遣い』に関係する話として、確かに一理あります。

では、この解き方で良いですか?

この解き方に限らず自分自身で考えて判断するべきだと思います。
ただ、私はこの方法をオススメしません。
私がこの方法を取らない最大の理由は、本文に対する集中や構造的理解がその都度途切れるという点にあります。
私が本気モードで読解問題を解くときは、重要なロジックに線を引き、重要性の低い部分はカッコで括り、パラグラフは前後関係や位置付けを分かるようにカンタンにメモして……と、書き込みながら読解していきます。
その結果、1周読めば文章全体のロジックの重要箇所やマクロ視点での文のつながりなどが自然と「見える化」します。
ここまでくれば解答の根拠などは自ずと分かります。仮に解釈の足りない部分があっても解答の段階で気付けます。

だからこそ、私からすると本文をいかに効率的に1周通読できるかの方が重要になってきます。

これって先生だから出来るだけじゃあ……。

1周でどれだけ分析できるかは能力差によります。
ただ、理由はこれだけではなく、下線部で読解を切って設問に入る解き方では、それまで読解に注力していたワーキングメモリーが解答の方に割かれて集中の焦点も中断されてしまう点に注意が必要です。

……ぶっちゃけ話の意味がよく分かりません!

先生は一点集中型だから本文を一気に走り抜けた方が効率的ってこと。
※加えて、本文の内容それ自体を全体としてより深く理解するという重要な理由もあります。

おいらは一気に全部読むなんてキツイなあ。

この辺りは特に個人差が大きい部分ですのでとにかく自分自身でいろいろ試してみて問題の出来具合を具体的に比較してください。
ただし、精読を訓練する段階では「本文を1周通読」が基本です。

……ところで、先生のその「見える化」した問題文って見せてもらえないんですか?

本当は例として出してみたいのですが、ネット上で問題ごと載せるのは著作権の問題があるため難しいです。また、正直なところ自分用のメモは分かりやすく説明する為の図示と全然違うという側面もあります。

確かに、他人の書いた殴り書きのメモって意味不明ですからね……。

メモの書き方も含めて個々人で試行錯誤していくことが大切です。
下線部以降の本文は本当に設問に影響しないのか?
なお、私が考えるもう一つの重大な懸念として、「本当に下線部以降の段落は設問に関わってこないのか?」という疑念があります。
※一つ前の段落の話は一定以上の読解力があっての話ですが、こちらは読解力に関係なく考えるべき部分です。
もしかすると、後の段落で補足説明を続けていくうちに前の下線部の設問に影響してくるという可能性も否定できません。また、成績の差をつけるために、トリッキーな設問をあえて仕込んでくるかも知れません。
そのような設問であれば、下線部まで読んだところで「解答の根拠となる段落」に到達すらしていないことになります。

問題形式も問題文のクセも、いつどのように変わるかはその年の問題作成者次第です。
結論:「先に本文1周通読」が読解訓練も兼ねてオススメ
以上より、当サイトの見解としては「本文を先に1周通読してから設問に入る」解答順序をオススメします。
当サイトでは、単に国語や英語の試験の点数を上げるためだけではなく、論理的思考力の育成こそが全ての知的領域の基盤として捉えています。
ですので、具体的な『設問対策』よりもまずは全ての科目の基礎である「論理的思考力」の成長を重視しています。
その点、「本文に集中して1周読む」というのは文章全体を通して精読する訓練にもつながります。
また、マクロ視点のパラグラフリーディングを訓練しようと考えるならば、前後のパラグラフのつながりや構成が重要になってくるため、なおさら文章の途中で読解を中断しない方が良いです。
そして試験においては、どのような設問が来ても必ず一度は先入観無しに本文を全て読むことができ、どのような出題パターンにも対応することが出来ます。

でも、本文を1周なんて読んでたら前の部分とか忘れるよね。

だからこそ読解しながら分析しつつ本文にメモしていくのです!
逆に言うと、解答の根拠にかかわるのにノーマークだった部分こそが分析力不足ということになりますので、復習や質問をしましょう。
なお、本文先読み派の中でも、注釈は先読みするか本文に出てくるたびにその都度確認するかで分かれると思います。
この点については、注釈は単純な補足説明だけでなく出題者からのヒントも含めて注釈されていること、また時間の都合から、私は注釈先読みを勧めます。いずれにせよ注釈は必読です。
もちろん「次の文章を読んで~」といったような冒頭の中にもヒントが埋め込まれているケースがあるため、冒頭文も必読です。

ちなみに私の場合は、設問を先読みする暇があるならむしろ本文を先に斜め読みしてから精読に入ります。
繰り返し述べているように解き方はあくまでも人それぞれですが、自分のパターンを確立しないで行き当たりばったりに解くのは非効率です。臨機応変な対応というのは、基本的な解答方針が土台にあっての話です。
もし国語や英語の長文読解の解答順序がいまいち定まらないのであれば、この記事をキッカケに今日から「本文先読み」で試してみてはいかがでしょうか。
※試験の特徴によっては設問先読みの方が良い場合もありえなくもないですが、それは試験本番対策の段階で個別具体的に考えて検討すれば良いことです。いずれにしましても精読する能力が全ての基本となります。
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