ベン図の書き方を数学の苦手な人向けに解説!集合と論理の文系的学習法|論理的思考のコツ⑫

数学の集合・ベン図のカンタン解説、プログラミングの論理ロジック本質講義~国語・英語・長文読解のコツ

 

スポンサーリンク

ベン図のカンタン解説

 

次に、ベン図をカンタンに説明します。

 

数学的な解説が知りたい人はググってみてください。ここでは数学的な説明ではシックリこない人向けに感覚的に見方のコツを説明してみますので、是非とも一緒に図を手書きして真似してみてください

 

なお、普段ベン図を使う場合はペン等での手書きが基本になりますので、その際は当記事のように当てはまらない部分を黒塗りで消すのとは逆に、当てはまる領域を斜線ストライプで塗りつぶす方が見やすいです。

 

まずは具体例からベン図を考える

 

ベン図の考え方の基本を理解するために、まずは身近なものを分類してみる。そして、図の使い方を身につける。(そこから必要に応じて教科書的な知識に置き換えていく)

 

それでは例題です。条件文をバラ撒きますので考えてみてください。

【例題】

  • ピカチュウ、キティ、マリオは日本生まれである。(作品的な意味で)
  • バットマン、白雪姫、マリオは人間である。
  • ムーミン、ミッキー、ピカチュウ、キティは人間ではない。
  • バットマン、白雪姫、ムーミン、ミッキーは日本生まれではない。
  • 人間でないものは尻尾が生えている。

問1 「日本生まれはマリオである。」は正しいか
問2 「人間ではない」または「日本生まれ」である者を全て挙げよ
問3 「日本生まれならば尻尾が生えている。」は正しいか
問4 「日本生まれであり人間ではない者は必ず尻尾が生えている」は正しいか

 

頭がこんがらがってきました。

(凄く見覚えのある名前だ……)

このような雑多な情報を分類整理してスッキリとビジュアライズするのがベン図なのです。

 

なお、ここで出てきている「マリオ」や「キティ」といった固有名詞は単なる記号と同じです。ここがただのA・B・Cになっても話は同じです。

この例題は、ベン図を理解している人であれば機械的・形式的に解ける問題になっています。

 

ベン図がどうしても苦手な人にとっての第一歩は、とにかく真似して手で書くことです。最初はワケが分からなくても構いませんので、手書きしましょう

 

ベン図を実際に書いて「分類」する

 

ベン図の書き方のコツは「大きな共通点」でくくる=分類すること

 

「ベン図を見てもよくわからない」という方は、いきなり2つの円の重なり合ったベン図を見ているというケースが多いように見受けられます。ですが、あのベン図の形はあくまでも1ページ目で解説した集合の応用です

 

そのような方は、まずは「その集合がいったい何の集合なのか」とラベルごとに物事を分けるのが先決です。言い換えると、「共通点で括れそうなポイントは何か」ということです。

 

それでは、この条件文のなかで「大きな共通点」は何があるでしょうか?

なんか「人間」と「日本生まれ」ってのがいっぱい出てる。

その捉え方で良いです。では、設問を考える前に図に書いてみましょう

 

論理と集合、単円

※「日本発」と表記しているのは、字数に収めるためです。

 

まず最初に書くのは円の中身です。よく分からないうちはまずは円を1つずつバラバラに書いてみましょう。その円に共通点=分類をラベル付けします。ここでは「人間」と「日本生まれ」です。

 

ここでやっていることは先ほどの温室効果ガスの円と同じような話です。

まずは「人間」のラベルに入る人(バットマン、白雪姫、マリオ)を集めます。次に、「日本生まれ」のラベルに入る人(ピカチュウ、キティ、マリオ)を集めます

そしてどちらにも入らなかった残りの人(ミッキー、ムーミン)は外に書きます

 

つまり、ラベルを個別に考えて分類するということです。

 

ミッキーさんとムーミンさんはどっちにも入ってないから「人間でも日本生まれでもない」ってことですね。ピカチュウやキティは日本生まれだけど人間ではないってことでしょうか。

※ミッキーはアメリカ発の不思議生物、ムーミンはフィンランド発の不思議生物。なおムーミン谷はフィンランドではなく幻想の世界にある。白雪姫はドイツのメルヒェン。

 

マリオがどっちにも入ってるぜ。マンマミーア。

その両方の円に入ってる部分を重ねることでベン図の完全版になります二つの円をそのまま真ん中に寄せて重ねるイメージです。

 

ベン図の身近な実例

※先程の円を「人間→マリオ←日本発」と重ね合わせるイメージ。

 

これで完成です。あとは感覚的に見方を身につけましょう。そのための図示なのです。

気をつけるべき部分は円が重なったパープル部分のマリオです。この重なり部分は「人間」で「日本生まれ」であるということになります。

 

ベン図を目で見て視覚的に使う例題

 

では、ベン図を使って例題を問いていきましょう。

 

問1 「日本生まれはマリオである。」は正しいか

 

これは1ページ目の復習になる問題ですが、ベン図で確認してみます。

 

ベン図の身近な実例

 

「日本発」の円にはピカチュウキティもいるから×ですね!

正解です!「マリオは日本生まれ」は正しくても、逆に「日本生まれはマリオ」とは限らないということですね。

 

ピンと来ない場合は、以下の質問について考えてみてください。
「①マリオ(の作品)はどの国から生まれましたか?」「②日本生まれのキャラクターを思いつくだけ挙げてみてください。」
①の答えは日本(任天堂)で決まりますが、②はマリオ以外にいくらでも当てはまります

 


 

問2 「人間ではない」または「日本生まれ」である者を全て挙げよ

 

ん?「または」?

このまたは」というのが実は数学的な用語なのですが、まずは「人間ではない」と「日本生まれ」というのがそれぞれベン図のどの部分に当たるか片方ずつ考えてみてください。

 

ベン図の身近な実例

 

「人間ではない」って、あれ?円の外にいるのはミッキーとムーミンだけ?(ピカ様もキティ様も人外じゃ?)

円の見方が違うわ、ブルーの部分「日本生まれ」の円の中にはあるけど、「人間」の円からは外れてるから「日本生まれだけど人間じゃない」ってことになる

だからブルーイエローの両方が「人間じゃない」ってこと

※「人間」の円はレッドパープルの部分で構成されており、ブルーは入っていない。

 

円がどのような重なり方になっているかに注意してください。

 

ここで、ベン図のそれぞれの部分が何を意味しているのかについて整理してみます。

  • レッド(バットマン・白雪姫):「人間」かつ「日本生まれではない」
  • パープル(マリオ):「人間」かつ「日本生まれ」
  • ブルー(ピカチュウ・キティ):「人間ではない」かつ「日本生まれ」
  • イエロー(ミッキー・ムーミン):「人間ではない」かつ「日本生まれではない」

※「かつ」というのは、「AとBの両方の条件に当てはまる」ということです。

 

まずはこれを視覚的につかめるようになることが第一です。ここがイマイチつかめなければ、画像を見ずに1から自分の手で書いてみてください

 

ベン図、not条件

 

 

……「人間ではない」部分は図で言うと↑こういうことになるから、ピカチュウ・キティ(ブルー)ミッキー・ムーミン(イエロー)になるのよ。「人間」の円の外なら全員「人間ではない」ってだけ。

 

そーなのかー。で「日本生まれ」ってのはただ「日本生まれ」の円の中を見ればいいってことだから……マリオ(パープル)ピカチュウ・キティ(ブルー)だ。てか、クールジャパンの3大巨頭だ。

 

 

 

そのとおりです!

 

「かつ」と「または」の数学的な意味をカンタンに

 

……と、ここまでの話は問2の前半部でした。

 

問2 「人間ではない」または「日本生まれ」である者を全て挙げよ

 

でも、「または」ってついてるのがよくわかんないなあ

 

では、普通の日本語で「または」とはどういう意味ですか?

ん~「どっちでもオッケー」ってこと?

そうです。ただそれだけの話です。では「人間ではない」と「日本生まれ」のどっちでもオッケーなのはベン図ではどの部分ですか?

 

ベン図の身近な実例

  • 「人間ではない」=ピカチュウ・キティ(ブルー)ミッキー・ムーミン(イエロー)
  • 「日本生まれ」=マリオ(パープル)ピカチュウ・キティ(ブルー)

 

じゃあピカチュウ・キティ(ブルー)ミッキー・ムーミン(イエロー)、マリオ(パープル)だ。どっちでもオッケーってことはどっちかにヒットしてれば全部ってことだよね?

 

ベン図、または、否定

 

 

正解です!これらは実際に自分で図を書いて「ココとココとココだな」と確認して下さい。

答え:ピカチュウ、キティ、ミッキー、ムーミン、マリオ

 

『「人間ではない」または「日本生まれ」』というのを数学的に表したのがĀ∪Bです。逆にĀ∪Bの否定がバットマン・白雪姫(レッド)になるのは『図を見れば明白』です。これは、上でベン図を黒く塗りつぶした部分を反転させてるだけです。
これがド・モルガンの法則を理解するコツにもなります。(「人間」かつ「日本生まれではない」

 

では問題が『「人間ではない」かつ「日本生まれ」』となっていたらどうなりますか?

 

かつ」っていうのが、両方当てはまるということでしたよね。

または」っていうのは「AとBのどっちでもオッケー」で、「かつ」は「AもBもどっちにも当てはまる」という違いで良いですか?

そうです。つまり「Ā:人間ではない」も「B:日本生まれ」も両方当てはまるのは誰?ということです。

 

じゃあピカチュウ・キティ(ブルー)だ。

B:日本が誇る Ā:不思議生物 だから。

 

なお、数学的には「Aではない」ことを「Aの否定」と呼び、「Ā」と書きますが、図で言うとただ「Aの円の外」というだけの話です。

 

ベン図の分類と紐付ける

 

問3 「日本生まれならば尻尾が生えている。」は正しいか

 

では、まず「尻尾が生えている」というのは問題文のどこで出てきましたか?

条件文の「人間でないものは尻尾が生えている。」これですね。

 

では、その「人間でないもの」というのはベン図のどの部分ですか?

ベン図の身近な実例

 

ピカチュウ・キティ(ブルー)ミッキー・ムーミン(イエロー)ですね。

ということは、ピカチュウ・キティ(ブルー)ミッキー・ムーミン(イエロー)がそのまま「尻尾が生えている」ってことですか?

 

ベン図、not条件

 

そういうことです。ベン図で「人間ではない」に当たる部分がそのまま「尻尾が生えている」にもなる、ということですね。

では問いの「日本生まれならば尻尾が生えている」というのは正しいですか?

「日本生まれ」ってのは図のマリオ(パープル)ピカチュウ・キティ(ブルー)になるから……マリオ(パープル)が外れてますね!だから×

 

この問題は、分類の発想が頭にないと考えるのが難しいです。例えば、対比構造が問題に絡んできたとしましょう。対比構造とは、まず最初に物事をA対Bに分けて、たとえば「AはCである」「BはDである」とそれぞれ説明して比較するような構造のことです。AとBの分類・紐付けさえ正しくできていれば、選択肢が「AはDである」「BはCである」と入れ違っていれば誤りであると論理的に判断することができます。これは感覚だけでは判断が困難な部分です。(対比構造については別記事で詳しく解説します。)

 

てか、ムーミンもキティもピカチュウもミッキーもみんな都合よく尻尾が生えてたんだな。

そこは……作問の都合ということで忖度してください

 

『「必ず」は言い過ぎだから誤り』は間違い

 

それでは最後の問題です。

 

問4 「日本生まれであり人間ではない者は必ず尻尾が生えている」は正しいか

 

あ!「必ず」って書いてある選択肢は言い過ぎだから×

はい、引っかかりました。

小手先の裏ワザで解くのはサイコロを振ってるのと同じです。

 

えー、でも大抵は×じゃない?

試験中にどうしても分からなくて鉛筆転がしに頼らざるを得ない状況なら好きに使っても良いです。現実的な時間制限もありますので。合理的な学習メソッドで着実に能力そのものを伸ばしたいと考えている人は、練習段階で裏ワザ的な発想に手を出すべきではありません。

 

裏ワザの練習をしても裏ワザの使い方しか分からないですね。

本当に裏ワザの練習をして高得点が取れるならそれもまた戦略ですけどね。私の経験上では、有効な学習方針とは思いません

 

どのような試験でも言えることですが、『極端な言い回しを使った選択肢は間違い』『具体的な選択肢は間違い』というような形式的な発想で演習を繰り返しても本質的な論理力の訓練には繋がり難いです本質的な成長を目標とする当ブログとしましては、まずは正攻法で能力自体を成長させて自力で出来る問題を増やしていき、それでも最終的に試験会場で手に負えない問題はバランス感覚で答えるような方針をオススメします

 

※数学の場合は逆に答えを導き出せるならば背理法でも大学レベルの公式でも何でもアリだと思います。ただし、中途半端に手を出すと暗記間違えや本来は適用できない場面で使うといった判断ミスも多々生じるリスクが有り、結局は近道になりません。学習段階では2次試験の論証でも使う前提で正攻法の解法から固めていった方が無難だと思います。ちなみに私は正攻法の解法パターン暗記のみでセンター数学は9割超えています。

 

論理で解答の筋道を立てるということ

 

……話を戻します。

日本生まれであり人間ではない者は必ず尻尾が生えている」というのは、ベン図で見るとどの部分が問われてるでしょうか?

ベン図の身近な実例

 

「日本生まれ」の円の中で「人間」の外だから……

ピカチュウ・キティになります!

 

 

慣れるとそうやってベン図を視覚的に使えます

では、「ピカチュウ・キティは必ず尻尾が生えて」いますか?

 

……てかコレ、さっきの尻尾生えてる4人から更にメンツを絞ってるだけだからに決まってるじゃねえか!

そのとおりです。

 

こうして、センス頼りで何となく分別していたものが明確に論理的に分類されるのです。

 

スポンサーリンク

集合の3つの円のパターンは2つ円の延長に過ぎない

 

ここまでの話が理解できれば、円が3つになるパターンもその延長です。

 

まずは①円の外の領域、②円が1つの領域、③円が2つ重なってる領域、④円が3つ重なってる領域、という4つの視点を理解することです。

例えば上図で言えば、紫の部分は「国語」と「数学」の円が重なった領域ですが、一方で「IT」の円からは外れています

例えば、「大学の受験科目」がこの紫の部分に当てはまることと思います。

 

対して、中央の灰色の部分は3つの円が全て重なっているので、「国語」「数学」「IT」の3つに共通する要素である、というだけの話です。

例えば、「論理的思考力」はまさしく共通して当てはまります。また、先程は紫の部分だった「大学受験科目」も、ITが受験に導入されたならばこの中央の領域になってきます。

 

こうした見方は、まさにグラフィック的な感覚で捉えるものです。

要するに、「あっ、3つの円があってそれらが重なり合ってるんだ!」と視覚的に掴めるか、ということです。

 

いきなりベン図の完成形から見てもイメージが付きにくいかも知れませんので、まずは単円それぞれの集合を意識することが第一です。

上図で言えば、「国語」「数学」「IT」の3つは元々バラバラの単円であり、それを重ね合わせたのがベン図である、ということです。

 

スポンサーリンク

まとめ

 

まとめにかえて、ベン図は「単なる数学の問題の一つ」に留まるものではありません。

 

IT・プログラミング教育でも必須の「or条件・and条件・否定」の組み合わせも、ベン図で実際に書いて考えれば理解できます。複雑な問題を論理式で解いていく前に、まずはベン図による基本概念を先に理解する方が良いと思います。

 

国語では、「問題文の条件A」と「本文の記述B」が論理的に合っているか判断することが正誤問題の基本であると言えます。

特に言葉の定義や要素の部分で問題になってくる場面が多くなると思いますが、単円のパターンだけでも良いので円の内か外かのイメージで判別していくとわかりやすくなると思います。

『定義』については超重要な概念ですので次の記事で説明します。

 

おまけ①:違う分類で練習

ベン図 ドラゴンボール

おまけ②:階層構造を円で図示した例(詳しくは後の記事⑮で)

文章構造の図解 文章―意味段落―形式段落―文―語彙・漢字 マクロからミクロへ

 

図解は試験のための情報整理にとどまらず、大学生・社会人としてのプレゼンでも思考整理でも重要な能力です。是非とも実際に自分で書きながら身につけましょう

 

私の本心としましては、文系志願者でも高校数学は捨てずに頑張っていただきたいです。微積の考え方は経済系の初歩レベルでも必須ですし、物理学でしか使われないと思われがちなベクトルですらプログラミングに役立ちます。
数学それ自体を専門にしなくとも、数学的思考は随所で使われます

 

NEXT →

定義とは、言葉の意味の共通認識!数学の定理と違い筆者が定義づける|論理的思考のコツ⑬
「~とは~である」で表される『定義』とは、言葉の意味を明確にすることです。国語や英語の長文読解問題での筆者自身の定義付けは、筆者の主張・考えに直結するからこそ大切です。 また、これらは共通認識、相互理解、コミュニケーションの齟齬にも関わる重要論点です。 その他、討論や小論文に役立つ考察として、数学の定理と定義の違い、文系学問特有の難しさ、法学における法律用語の定義の考え方、『壁ドン』の具体例などから解説します。

数学の勉強法全般についての解説はコチラ

 

※連載シリーズ①「ロジック基本講義(国・英・長文読解)」→ 各話リスト

※連載シリーズ②「効率的な勉強法」→ 各話リスト

コメント

タイトルとURLをコピーしました