指示語が読解問題にも絡む具体例!こそあど言葉は国語の長文読解でも基礎|論理的思考のコツ⑨

小学生で習うこそあど言葉・指示語と大学受験国語・英語ロジック本質講義~国語・英語・長文読解のコツ

 

これに対して~」「その点、~」「ああいった事は~」

 

これらは小学校で習う『こそあど言葉』すなわち指示語ですが、これ、読解問題では必ず読み解けないといけない基本中の基本です。

小学生レベルの問題のようでいて、実際は大学受験レベルの長文読解でも重要な盲点です。

 

なお、英語がネイティブではないという方の場合は、まずは国語で指示語が理解できないと英語の指示語も理解が困難になります国語は英語学習の基盤です

 

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指示語が読解問題に絡む具体例

 

同じ例文が続きますね。

読む人が読めばそれだけ多くの論点が読み解けるということです。

 

次の文章を読んで問いに答えよ。

①近年、地球温暖化対策が世界的に問題となっている。
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。

問2 下線部について、議論する必要があるのは何か答えなさい。

 

 

設問は下線部だけでなく一文全体を読む

 

答えは「温室効果ガスの削減」?

『10文字以内で答えよ』であれば正解ですが……ではその根拠は?

直前に書いてるから?

 

『直前を見る』……という発想で止まるのは長文読解問題の本質ではありません

 

下線部の問題が出たら必ずその一文を全部読む。

 

文章というものは文と文(ミクロ構造レベル)段落と段落(マクロ構造レベル)がロジカルにつながっていくことで全体が成り立ちます。(ミクロ視点もマクロ視点も文章構成における超重要な本質の部分ですので後の記事で詳しく解説します。)

 

そして文章のミクロスケールである一つの文は、その一文全体が一つの単位になっているのです。

 

……やや難しい表現になりましたので、これから具体的に解き方・考え方を示します。

 

前後の文に取り掛かる前にその下線部の含まれた一文全体を読むのが第一です。……すると何が見えてくるでしょうか?

 

指示語が何を指しているか必ず脳内補完する

 

①近年、地球温暖化対策が世界的に問題となっている。
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。

 

この点について、よく議論する必要がある。

そうです。下線部は一文の中の一部に過ぎないのです。

ではここで何を「議論する」のかと言えば、文頭の「この点について」……来ました、指示語です!

では、「この点」とはどの点ですか?

 

それこそ直前の文の「温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している」そのままじゃないんですか?

そうですね。その一文が最も直接的な指示内容だと捉えられます。

 

えっ、でもそれじゃあ結局「直前の文」が答えで、同じ話じゃないの?

全然違います。

 

指示語は、意味的には指示する言葉がそのまま指示語の位置に入ることができます。

つまり、文法レベル(=指示語)で前の文と選択肢の一文が直接つながったのです!

 

①近年、地球温暖化対策が世界的に問題となっている。
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
この点について、よく議論する必要がある。

 

パラグラフレベルの接続

 

更に、この指示語によって、段落③と段落②がパラグラフレベルで直結しました!上で青マーカーを引いている箇所です。

 

段落(パラグラフ)というものは、ミクロの文が集まった一つの意味の塊です。

一つの意味の塊である以上、パラグラフ単位で内容を理解するのが論理的な筋です。

 

では、パラグラフ②を頭から読んでみてください。

「②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減で」

その主眼」……来ました、指示語です!

では、「その主眼」とはどの主眼ですか?

 

段落①「地球温暖化対策」の主眼が「温室効果ガスの削減」です、ということですね!

Exactly(そのとおりでございます)。

これによって、段落②と段落①も指示語という文法でつながりました!

 

①近年、地球温暖化対策が世界的に問題となっている。
その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれ(=温室効果ガスの削減)に含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
この点について、よく議論する必要がある。

「二酸化炭素の削減もこれに含まれる。」の「これ」はもちろん「温室効果ガスの削減」です。

 

ここから更に、パラグラフ同士のつながりというマクロ構造レベルの話に発展していきます。
マクロ構造の話はまた別の次元の話になるため、後の記事で詳しく説明します。

 

ここでは簡単に流して説明します。

 

パラグラフ①は問題提起(あるいは話題提起)です。ここではまだ抽象的な一般論で、具体的な中身は何も分かりません。(「世界的に問題となっている」と述べているだけ)
そしてパラグラフ②で①の『(世界的に問題となっている)地球温暖化対策』の具体的な中身を展開しています。

 

抽象論→具体化
これも典型パターンです。

 

こうして、パラグラフ②も結局は①の一般論の延長に過ぎないということが分かります。
だからこそ筆者の主張と区別して読みます。

 

こうして①と②で一般論を出しておいてからの、パラグラフ③です。
ここで「議論する必要がある」、とようやく筆者の考えが出てくるわけです。逆に、「議論する必要」以上のことは主張していません。

 

段落③から先の話の展開は、前回の記事で説明したとおり様々なパターンが考えられますので、必ず本文に沿って筆者の主張を解釈していきましょう。

 

模範解答

 

この例題は読解の際の思考プロセスを説明するための問題です。普段の演習でも、答えがあっているかよりむしろ答えに至る考え方が合っているかを確認してください。(もっとも、長文読解の場合は問題集によって解説の仕方にもクセの違いが出てきやすいとは思います。)

 

①近年、地球温暖化対策が世界的に問題となっている。
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。

問2 下線部について、議論する必要があるのは何か答えなさい。

 

A:論理的に一番直球の解答
温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者が主張している点

 

この解答Aは、『解答の根拠は直前』という決めつけではなく本文を分析した結果として前文が解答になったということです。

 

まず、質問が「議論する必要があるのは何か答えなさい」、つまり「何」と問うていますので、名詞の形で答えるのが筋です。そこで、この質問が実質的には段落③「この点」の中身を問う問題であることから、対応する形で「~点。」で回答しています。問いの形に答えの形も合わせる、という点は次の記事で詳しく説明します。

 

B:「私、分かってますよ」感を押し出す解答
温室効果ガスを削減することが、世界的に問題となっている地球温暖化対策につながると識者が主張している点。

 

問題集によっては解答Bまで、更には周辺知識を使ってもっとテクニカルで難解な解答Cを目指すような模範解答も見かけるのですが、一般受験生は率直に解答Aを目指すのが良いと思います。その上で、読解に自信がある場合は解答Bのように加点要素を付け足す要領です。

 

国語科の問題に限らず、出来るだけオーソドックスでシンプルな解答を推奨します。

 

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まとめ

 

この例文はミニマルな短文ですのでなんとなくでも分かるかもしれませんが、実戦で長文になればなるほど指示語による連結を理解することが重要かつ必須の技術になってきます。

 

小学生でこそあど言葉を学んでいたのは決して単純な問題だからというだけではなく、すべてにつながる基本のなかのキホンだからです!

 

長文読解の演習をする際は、指示語が何を指しているかすべて記入するくらいの要領でも、基礎訓練としてはやりすぎではないです。

演習の時点でもし『指示語の指示する内容』を記入しようとしても出来ないのであれば、指示語が分かっていないということです実践あるのみです。

 

読解だけではなく記述問題・小論文においても指示語は明確に使いましょう。むしろ、指示語は最低限に抑えるほうが安全です。
あいまいな指示語は採点側からすると目立ちますので、格好の減点対象です。

 

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※連載シリーズ①「ロジック基本講義(国・英・長文読解)」→ 各話リスト

※連載シリーズ②「効率的な勉強法」→ 各話リスト

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