「これに対して~」「その点、~」「ああいった事は~」
これらは小学校で習う『こそあど言葉』すなわち指示語ですが、これ、読解問題では必ず読み解けないといけない基本中の基本です。
小学生レベルの問題のようでいて、実際は大学受験レベルの長文読解でも重要な盲点です。
指示語が読解問題に絡む具体例

同じ例文が続きますね。

読む人が読めばそれだけ多くの論点が読み解けるということです。
次の文章を読んで問いに答えよ。
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。
問2 下線部について、議論する必要があるのは何か答えなさい。
設問は下線部だけでなく一文全体を読む

答えは「温室効果ガスの削減」?

『10文字以内で答えよ』であれば正解ですが……ではその根拠は?

直前に書いてるから?
『直前を見る』……という発想で止まるのは長文読解問題の本質ではありません。
文章というものは文と文(ミクロ構造レベル)、段落と段落(マクロ構造レベル)がロジカルにつながっていくことで全体が成り立ちます。(ミクロ視点もマクロ視点も文章構成における超重要な本質の部分ですので後の記事で詳しく解説します。)
そして文章のミクロスケールである一つの文は、その一文全体が一つの単位になっているのです。
……やや難しい表現になりましたので、これから具体的に解き方・考え方を示します。

前後の文に取り掛かる前にその下線部の含まれた一文全体を読むのが第一です。……すると何が見えてくるでしょうか?
指示語が何を指しているか必ず脳内補完する
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。

「この点について、よく議論する必要がある。」

そうです。下線部は一文の中の一部に過ぎないのです。
ではここで何を「議論する」のかと言えば、文頭の「この点について」……来ました、指示語です!
では、「この点」とはどの点ですか?

それこそ直前の文の「温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している」そのままじゃないんですか?

そうですね。その一文が最も直接的な指示内容だと捉えられます。

えっ、でもそれじゃあ結局「直前の文」が答えで、同じ話じゃないの?

全然違います。
指示語は、意味的には指示する言葉がそのまま指示語の位置に入ることができます。
つまり、文法レベル(=指示語)で前の文と選択肢の一文が直接つながったのです!
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。
パラグラフレベルの接続

更に、この指示語によって、段落③と段落②がパラグラフレベルで直結しました!上で青マーカーを引いている箇所です。
段落(パラグラフ)というものは、ミクロの文が集まった一つの意味の塊です。
一つの意味の塊である以上、パラグラフ単位で内容を理解するのが論理的な筋です。

では、パラグラフ②を頭から読んでみてください。

「②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減で」

「その主眼」……来ました、指示語です!
では、「その主眼」とはどの主眼ですか?

段落①「地球温暖化対策」の主眼が「温室効果ガスの削減」です、ということですね!

Exactly(そのとおりでございます)。
これによって、段落②と段落①も指示語という文法でつながりました!
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれ(=温室効果ガスの削減)に含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。
「二酸化炭素の削減もこれに含まれる。」の「これ」はもちろん「温室効果ガスの削減」です。
模範解答

この例題は読解の際の思考プロセスを説明するための問題です。普段の演習でも、答えがあっているかよりむしろ答えに至る考え方が合っているかを確認してください。(もっとも、長文読解の場合は問題集によって解説の仕方にもクセの違いが出てきやすいとは思います。)
②その主眼となるのが、温室効果ガスの削減である。二酸化炭素の削減もこれに含まれる。温室効果ガスを削減することによって、温暖化が食い止められると識者は主張している。
③この点について、よく議論する必要がある。
問2 下線部について、議論する必要があるのは何か答えなさい。

この解答Aは、『解答の根拠は直前』という決めつけではなく、本文を分析した結果として前文が解答になったということです。

問題集によっては解答Bまで、更には周辺知識を使ってもっとテクニカルで難解な解答Cを目指すような模範解答も見かけるのですが、一般受験生は率直に解答Aを目指すのが良いと思います。その上で、読解に自信がある場合は解答Bのように加点要素を付け足す要領です。
まとめ

長文読解の演習をする際は、指示語が何を指しているかすべて記入するくらいの要領でも、基礎訓練としてはやりすぎではないです。
演習の時点でもし『指示語の指示する内容』を記入しようとしても出来ないのであれば、指示語が分かっていないということです。実践あるのみです。
あいまいな指示語は採点側からすると目立ちますので、格好の減点対象です。
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