not but構文の本当の文法的意味は主張の強調!例文で使い方を解説|論理的思考のコツ④

not but構文の本当の英文法的意味と英語での使い方ロジック本質講義~国語・英語・長文読解のコツ

 

みなさんは『文法』と聞くと何をイメージするでしょうか?

中学以降であればまず英語や古文を想像する方が多いかと思います。

 

試験問題などにおいて『文法』と聞くと、単なる初学者の基本問題と思っていませんか?

 

実際は、この単なる基礎問題と思われがちな『文法』こそが長文読解の基本テクニックであり有力な解法なのです!

 

今回取り上げるnot but構文は英語・国語いずれの長文読解でも根幹に関わる重要トピックです。それだけでなく小論文や作文など、論述する側においても必須です。
長文読解の根本にある論理は国語も英語も共通します!

 

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文法を「活きた知識」にする

 

それでは、さっそく具体例から入っていきましょう。超頻出項目である「not but 構文」の例です。

 

not but 構文を例に

 

not but 構文」とは、「not A but B」で表される、もっとも初歩的でシンプルな英文法です。

 

例: He is not Takeshi but Satoshi.

彼はタケシではなくサトシだ。

 

つまり「not A」でAを否定しておいて「but B」でBを肯定する構文です。

『構文』という言葉をもっと単純に表現すれば、「お決まりのパターン」ということです。

 

この構文は、「AではなくBだ」という形で、日常の日本語でも超頻出パターンです。

 

 

not but構文の日本語での実用例

 

not but構文は「~ではなく、~である」という形に限らず、「否定肯定」の流れであれば機能的にはほぼ同じ働きとなります。

 

この構文は古今東西を問わず超頻出のパターンですので、日本語でも実例は山ほどあります。

  • 国語はセンス?いいえロジックです。
  • 勉強は目的ではなく手段だ。
  • 「これは訓練ではない、本番である!」
  • 「今のはメラゾーマではない…メラだ…。」
  • 「(ベジータ?)ちがうな……俺はスーパーベジータだ!」

 

以下、分かりやすいように日本語で説明しますが、実際のところはそのまま英語に置き換えても同じ機能を果たします

 

not A but Bの本当の意味・機能

 

ふ~ん、否定して肯定ってだけね。

単純な文法問題ならそれで終わります。しかし、それならば、何故わざわざ否定を最初に持ってきているのでしょうか

 

この構文の真髄は、Aを比較対象として否定するための前フリに使って自分の主張であるBを強調する点にあるのです。

 

たとえば上で挙げた例文を見てみましょう。

「これは訓練ではない、本番である!」

 

この文の場合は、『(君たちは)これを訓練だと思って軽視してるだろうけど』と比較対象として取り上げておいてそれを否定してからの「本番である!」、と主張したい内容を強調するのが主目的です。

 

それでは実際の例の中で、(Aは否定するためのただの前フリなのでカッコでくくり)Bは重要なのでアンダーラインを引いてみましょう

 

  • 国語は(センス?いいえロジックです。
  • 勉強は(目的ではなく手段だ。
  • 「これは(訓練ではない、本番である!
  • 「今のは(メラゾーマではない)…メラだ…。」
  • 「(ベジータ?)(ちがうな)……俺はスーパーベジータだ!

 

なんだか一気に強調されてる感じがしました

これこそが「強調」の機能なのです。not but構文は日常茶飯事で使われる構造ですので、普段の生活で試しに探してみてください。

 

『(俺が化け物?違う、俺は悪魔だ!

ハッ!?こんなところにも!

 

強調表現と銘打たずとも、否定の前フリを持ってきている時点で自然と肯定が強調されることになる、という話です。

 

not only but alsoの文中での使い方もほぼ同じ

 

ちなみに、not only A but also B」構文も文章読解においては同じような機能があります

 

例えば、「世界でもっとも読まれている書物」の中でも同じ技法が使われています

イエスは答えて言われた、「『人は(パンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。

 

「not A but B」との違いは、例えば「Aはそれはそれで正しいけど何と言ってもBだよね」というようなニュアンスです。

とは言え、結局はAを引き合いに出してBを強調したいという点では同じような使われ方になります。

 

ちなみに、英文では以下のように「not ~ alone, but (also) ~」の形を取っていますが、言い回しが微妙に違うだけで本質的には同じような機能です。(そもそも英語が原文でもありませんが)

Man shall not live by bread alone,

but by every word that comes from the mouth of God.

文法構造的には、前置詞byの句が並列に並んでいるだけです。

 

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文法が読解問題の解法になる

 

では、この構文が論説文で使われたらどうなるでしょうか?

 

地球温暖化対策でもっとも大切な概念は温室効果ガスではなく、持続可能性である

このような具合です。

 

ここで質問ですが、論説文のそもそもの目的って何ですか?

何かを論じる……主張することですか?

そうです、筆者の主張が目的です。

では、論説文のなかで強調したい部分というのはズバリ何ですか?

筆者の主張が目的なんだから、筆者の主張を強調したい

これはシンプルな話です。

 

論説文も物語文も古文も漢文も英文も、結局のところ筆者の言いたいこと」を表現するのが文章なのです。

それがストーリーでも論説でも、「筆者の言いたいことを表現する」という点では同じです。

 

そして当然ながら「筆者の言いたいこと」は文中で強調されます。

 

マンガにおいても、強烈なインパクトの大ゴマがドンッと出て、決めゼリフが来たりしますね。これがコマ割りのメリハリの演出効果です。

 

人の夢は!!!終わらねェ!!!!(ドンッ)

……ハッ!?

ほんとに主人公らしい決めゼリフね。

いや……むしろ真逆なのだが……。

 

ちなみにその場面は、「夢見る時代は終わりだ」といった否定的な流れを否定して出た主張です。いわば『否定の否定』です。

 

一方、文章の世界では強調表現がたくさんあります。

ここでの話は、実は文章構造の中では強調構文を使うまでもなくnot but構文が実質的な強調表現になる、ということです。

 

文法やイディオムというのはいわば文章の演出です。

これはつまり、文法の「形だけ」で筆者の主張がある程度絞れることを意味します。

 

地球温暖化対策でもっとも大切な概念は温室効果ガスではない(ざわ……ざわ……)、持続可能性である(ドンッ)

 

読者のなかでは地球温暖化対策といえば温室効果ガスと思う人が多いだろうけど実は違うんだ……。

 

こうして読者の考えそうなこと、すなわち一般論を否定しておいてからの主張です。

 

当然「持続可能性である」というのが筆者の本当に言いたい主張であり、筆者の主張ということはすなわち要旨になります。

こうして、要旨が勝手に浮かび上がってくるのです。

 

ここで改めて主張します。国語は(センスよりもロジックが重要なのです!

 

 

どのパラグラフでどのように使われるかに注意

 

ただ、どのパラグラフ(段落)でどのような使われ方をしているかによって強調されるレベル、範囲が変わる点に注意です。

たとえば具体例を扱うパラグラフです。

 

もしも具体例を示す段落で、

なお、地球温暖化は(その全てが解明されているわけではなく、未だ因果関係の不明瞭な点が多々あることに注意を要する。

とあった場合はどうでしょうか。

 

具体例を示すパラグラフというのは基本的には主張につなげるための論証の過程、いわば『主張のロジックを具体例に当てはめてテストする段階』で、文章全体のマクロ構造から見ると一つのパーツにすぎません。(マクロ構造は後の記事で説明します。)

ですので、ここでは文章全体を貫く主旨になるとは言い難いです。

 

どういう意味?

具体的なたとえ話って、そのたとえ話自体を伝えたいんじゃなくてそれを使って本当に伝えたいことが別にあるでしょ?ってこと。

 

そうです。もしもこの例文が主旨になるならば、結論を述べるような重要なパラグラフで「まだ因果関係がよく分かってないんだ!」という主張が改めてなされるはずです。

 

しかし、それでも、設問で「その具体例に関わる」パラグラフを問われたらここが強調部分の一つになります。

つまり解答の手掛かりになるということです。

 

たとえば択一問題で「地球温暖化は科学的に解明されている。」と断言されていたら言い過ぎで×と分かります。

 

 

パラグラフ構成での「not A but B」

 

文章全体をマクロスケールの構造から、つまりパラグラフ単位で理解できるようになると、マクロのスケールでもnot butの構造が見えてきます

 

たとえば、筆者の立場に対する反対説を数段落にわたってあえて詳細に述べておきます。抽象的な主張から具体的な例まで挙げていきます。

その上で反対説の弱点を突いて反証、つまり否定します。

 

そうして相手の弱みを突いたところで筆者の主張を突きつけてフィニッシュ、という流れです。

 

マクロスケールでの文構造の解析はミクロレベルで一文一文のロジックを精読出来ることが前提の話ですので、追々意識してみてください。一番良いのはミクロとマクロを両方意識することです。これらの点は後の記事で詳しく特集します。

 

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まとめ

 

文法というのはルールです。つまりワンパターンです。

 

not but構文も強調表現も接続詞もほぼパターンです。

そのため、よく使われる重要な文法をロジックの道具として意識的に学習しておけば、国語・英語の長文読解も数学のようにパターン化するのです!

 

単純に「not A but B」=「AではなくBである」と機械的に覚えただけでは、長文読解の中で文章の論理的な構造から理解するのは難しいです。

国語・英語・漢文といった言語の違いの前に、論理的思考力が大切です。

 

文法知識約束された勝利の方程式のようなものなのです!

 

当記事ではフォントの色を変えることでnot but構文を「見える化」しました。手書きの演習ではそれは難しいですが、カッコ括りとアンダーラインは試験本番でも使えます。また、本文の読解については自分さえ分かれば良いですので、自分独自の記号も本文の方には好きに書き込めます。
文法の分析に限らず、実際に自分なりに気付いたことを書き込みしながら読解問題を演習るのが長文読解の訓練法の基本です。

 

 

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※not but構文をマクロスケールで使った例(英語・国語共通)

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※連載シリーズ①「ロジック基本講義(国・英・長文読解)」→ 各話リスト

※連載シリーズ②「効率的な勉強法」→ 各話リスト

 

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