ここまでの3記事では、目標設定と学習計画の立て方について詳しく解説しました。
勉強の目標の立て方は長期→中期→短期目標で!簡単な目標設定の例|勉強法・教育法⑫
勉強の計画倒れはPDCAサイクルで改善!具体例で分かりやすく解説|勉強法・教育法⑬
学習計画が苦手ならCAPDサイクル!勉強量を見える化するコツ|勉強法・教育法⑭
その中で、学習計画の軸に据えていたのが問題集です。
中学・高校や資格学校に通っている方であれば学校で使っている問題集をベースにすれば良いのですが、実際は学校の教材ではカバーしきれないケースや独学のケースも多いかと思います。
そこで、問題集・参考書の選び方のポイントをカンタンに説明してみたいと思います。

問題集なんてネット通販サイトで人気なヤツを適当に買えば良いんじゃないの?

それも一理ありますが、良い問題集の選び方のコツを知った上で選別する方が更に良いのではないでしょうか。

……それも一理ある。
当記事では、なるべく万人向け・全ジャンル共通の基準となるような選び方を解説します。
問題量より解説量、答えよりも解答のプロセス
まず、ボリュームの面です。
ここで、問題数からボリュームを考えるケースもあるかと思います。
ですが、以前の記事でも触れたように、「これまで解けなかった問題が」解けるようになる、という点こそが勉強の核心です。
ここで、もし問題数ばかりが多くて解説集が薄っぺらな問題集であれば、間違えた問題はどうすれば解けるようになるでしょうか?
もしも間違えた問題を理解するために別の参考書や問題集に頼るのであれば、最初からそちらを進めた方が早いです。
こうした点は、応用問題や国語・英語の長文読解などでは特に顕著になります。
応用力が試される問題というのは、実際の答えにたどり着くための思考プロセスを理解することこそがカギですので、むしろ解説集こそが成長するためのメインコンテンツになります。

塾や予備校は、答えだけ見ても分からない思考プロセスの部分を教えるからこそ価値があります。問題集においては、解説こそがその部分にあたります。
当サイトの完結シリーズ「論理的思考のコツ・本質講義」も、まさに国語・英語の読解時の思考プロセスを中心に徹底解説しています。
※もちろん質も量も充実しているのが理想ですが、優先度としては解説の質の方が重要です。そしてこれは参考書の解説についても言える話です。
解説・説明の質の高い問題集・参考書を選ぶ

次に、解説の中身の質について解説していきます。実際にカンタンな数学の問題を通じて見ていきましょう。
※以下、数学の問題集を例に具体例で説明しますが、これらの説明は他教科や参考書においても通ずる話です。
NG例:答えだけしか書いていない問題集
はじめに、もっとも避けるべきは「答えだけしか書いていない問題集」です。
これこそが全面的にオススメできない問題集です。
この問題を間違えた人は、いったいこの答えからどのような成長が得られるでしょうか。
ここで数学の得意な人に質問したり、他の参考書類を使ったりしないと解けないのであれば、この問題集の存在意義は無いに等しいです。

ああ、これはダメなやつですわ。

このような極端な例を見れば、逆に解説の大切さが分かるはずです。
今の時代にこのような問題集はそうそう無いかと思われますが、もしかすると地元のローカルな試験の過去問などでは有りうるかも知れません。なぜならば、需要が少ない商品に労力を掛けても採算が取りにくいからです。
そのようなローカルな試験の場合は、地元の有力な塾が内部向けに情報を提供しているケースが多いかと思われます。それならば、素直にその塾に入った方が期待値は上がることでしょう。
ビギナー非推奨:解説がワンフレーズで簡素すぎる問題集
次に、解説が簡素すぎる問題集です。
確かにこれで答えは合っていますが、これは「分かっている人には分かる」ような書き方です。
そもそも二次方程式がそこそこ以上に分かっている人にとっては、このような問題は単なる計算練習に過ぎませんのでこれでも構いません。
対して、基礎レベルがよく理解できていない方にとっては解説が簡素すぎて役に立たない可能性が十分に考えられます。

あれ?この問題って、因数分解できませんか?

その通りです。つまり、解き方にも良し悪しがあるということです。
途中のプロセスが全部書いてあり、論証としては満点の解説
次に、プロセスが全て書かれた解説です。
⇔7(x^2+6x+8)=0
⇔7(x^2+6x+8)÷7=0÷7
⇔x^2+6x+8=0
⇔(x+2)(x+4)=0、
∴ x=-2,-4
そこそこ以上に数学が出来るのであれば、これを見るだけで何をやっているのかが全て理解できます。
そして一般的に言えば、ここからが問題集選びの選択肢に入ってくるクオリティと考えておいて良いです。
ただし、論証過程としては満点ですが、先ほどと同じように、二次方程式が苦手な方にとってはまだ分かりにくい解説であることは否めません。

うーん、数式だらけで何がなんやら。
理想:初心者向けに考え方のコツまで細かく解説する問題集・参考書
続いて、論証過程を超えて、考え方のコツまで書かれた解説です。
※以下、数学的な用語は適当です。
7x^2+42x+56=0
二次方程式を解く時の最初のポイントは、まずはそれぞれの係数に共通する因数が無いかを確認することです。
ここでの係数は、7と42と56で、それぞれ素因数分解すると7、2×3×7、2×2×2×7となります。
7が共通していますので、各係数を7で割ってカッコでくくりましょう。
7(x^2+6x+8)=0
ここで両辺を7で割ってあげると、カッコが取れてよりシンプルな形になります。
7(x^2+6x+8)÷7=0÷7
⇔x^2+6x+8=0
次に、解と係数の関係を考えます。
この方程式に当てはめると、α+β=6,αβ=8となるような組み合わせが~
たすき掛けをすると~(以下略)
この解説は、証明問題でも書く必要のない考え方のコツまで書いてあります。
特に、数学の苦手な方が独学で勉強するのであれば、解説は懇切丁寧であるほど理解の助けになるはずです。
一定以上分かっている人間からすると少々クドい解説かも知れませんが、必要がなければ読み飛ばせば良いだけです。

ポイントは、問題が解けなかった人を想定した解説になっているかという観点です。
参考:学校で解答が回収される前にデータ化しておく
学校で購入させられた問題集の場合、もしかすると学校の方で解答・解説集が回収されるケースもあるかも知れません。これは一般的に、宿題で答えの丸写しを防ぐための措置です。
ですが、「その場ですぐに見直し・解き直しも進めたい」という学習意欲の高い方にとっては阻害要因でしかありません。
※見直し・解き直しは早ければ早いほど間違えた部分をフレッシュに思い出せる状態で復習できるという側面もあります。
そのような場合は、写メやスキャンなどで予め解説集を全て画像データ化しておきましょう。
大切なのは「自分自身が成長できるかどうか」という一点であって、学校側の都合に合わせる必要はありません。

もちろん丸写しする目的でデータ化するのは控えましょう。
なるべく現物を見て最有力の1冊を絞ること
今の時代であれば、ネットの情報を参考に問題集を選ぶというケースも多いかも知れません。
ですが、ネット上に掲載されたサンプルでは、解説集まで細かく見られるケースは非常にレアかと思います。参考書でも、サンプルページだけでどこまで良し悪しを判断できるかは微妙なところです。
ですので、なるべくならば書店などで現物を確認して判断するのが理想です。
ネットでレビューを読む場合でも、解説のクオリティに言及したレビューがあれば積極的に目を通しておいた方が良いです。
ここで現物の確認をオススメしているもう一つの理由は、問題集の場合は出来る限り最良の1冊を選んで周回した方が良いからです。
以前の記事でも解説したように、問題演習の過程で一番重要なのは解き直しです。
解き直しを軸とした場合、複数の問題集をあちこち解くよりも、1冊を周回した方が学習効果が高いです。
間違えた問題、理解の不十分な問題も、1周目より2周目、2周目より3周目の方が確実に理解度が高まりスピードも上がります
そうして分からない問題を粗方つぶしていけば、試験の一定レベルの問題は全体的にカバーできることになります。
その段階になってから、次のステップの問題集に進むか判断すれば良いということです。

だからこそ、最初に問題集を選ぶ段階で厳選したほうが結果的に効率が良いということです。
※なお、「1冊に絞って周回すべき」というのは問題演習の解き直しサイクルについての話です。
参考書の場合は問題演習で分からない部分の情報ソースとして機能しますので、むしろ様々な切り口の参考書があった方が不明点の解明に繋がりやすいかと思います。
挿絵は本質ではない、がモチベーションには役立つかも
次に考えるべきは、絵などのデザイン面です。
例えば、コツを伝えるためのイメージ図や、構造をうまくまとめた図示などはまさしくメインコンテンツの一環です。いわば良いプレゼン資料のようなものです。
よくあるケースとしては、ネイティブの視点から英単語の本来のイメージをイラスト化したようなものです。アレはまさに図示そのものです。
しかし、学習教材においては、キャラクターの挿絵や萌え絵などは本質的なコンテンツではありません。
どれほど挿絵が素晴らしくとも、数学の苦手な人が挿絵を見ているうちに数学力アップするようなことはありません。
とは言え、人によってはモチベーションにつながります。
勉強に限らずどのような分野でも言えることですが、気の進まない物事というのは最初に手を伸ばして作業を始める段階が一番のハードルになります。

どういう意味?

最初に5分でも勉強を始めるのと、やり始めてから20~30分進めるのとではキツさが違うでしょ?ってこと。

あるある。宿題とか1分たりともやりたくないけど、やり始めたら何やかんやでしばらくは続くわ。
その点、そうした挿絵が最初に手を伸ばす際の心理的な抵抗を和らげることにつながるかも知れません。
もしそうなれば、挿絵が学習意欲にはプラスの影響を与えた、ということになります。

じゃあ、パッと見で絵の良いやつを選べば良いんだな。

ただし重ねて言いますが、挿絵が本質ではありません。理解に役立つのは何よりも解説・説明の中身です。
※どうしても手が伸びない科目などであればデザイン性重視もアリかも知れませんが、できれば内容も共に充実した教材を選びたいものです。
あるいは、最初の1冊に取っつきやすいイラストメインの教材を使い、一通りこなせたら本格的な問題集や参考書に進むというのも一つです。
難易度は難しすぎず易しすぎず、ステップアップ
問題演習で大切なのは、出来なかった問題が出来るようになることです。
9割~満点を連発するような易しすぎる問題集では伸び代がありません。(満点を目指すような試験を受けるのでなければ)
一方で、難しすぎて手に負えない問題集はそれはそれで身になりません。
解説を読んでも理解できないような問題集を頑張って1周したところで、果たして「できる問題」がどれだけ増えるでしょうか。
あるいはそうした問題が2周目で分かるようになるでしょうか。
大切なのは基礎レベルからのステップアップです。
そもそも基礎レベルというのは、応用問題や発展問題の前提になるからこその「基礎」なのです。
意地と気合で難問にチャレンジしていくうちに『戦いの中で成長する』ようなやり方も一つかもしれません。逆にそれで闘志に火がつくタイプの方も居ることでしょう。
ですが、そのようなタイプでなければ、同じ時間と労力で適切なレベルの問題集をバリバリ周回した方が遥かにトントン拍子に成長できるのではないでしょうか。
「その後に」上のレベルの問題集へ進めば良いだけの話です。

難関レベルを狙うならば、尚のこと高速で基礎レベルを習得して応用レベルに入る方が結果的に近道です。そもそも難関の試験こそ基本問題を落としていては話になりません。
なお、参考書であれば、使いどころが無ければ意味がないと言えます。よって、自分の取り組むレベルの問題に参考書のレベルも合わせる必要があります。(必要なレベルの内容を網羅した上で、プラスアルファで難しい内容を含む場合は構いません)
まとめ
以上、問題集・参考書の選び方のコツについて、なるべく万人向けに解説してきました。
- 問題量より解説量
- 解説の中身は自分の成長につながるような説明になっているか
- 挿絵等は本質ではない、がモチベーションアップに役立つならそれも一つ(先にとっつきやすさ重視の1冊を回して本格的なものに進むのも一手)
- 難易度は難しすぎず易しすぎず、1冊を周回して十分に理解できてから次のステップに進む(※参考書は何冊あっても良い)
- なるべく現物を確認してからチョイスできれば理想

目的は成績アップです。その問題集・参考書が成績アップのための良い道具となるかという点こそが本質です。
※問題集の使い方の基本は「解き直し」です。
※勉強の基本は「間違い潰し」の作業です。
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