勉強において避けて通れない要素として、学習環境があります。
元塾講師である私の見立てでは、真面目な方ほど「まずは自習室や図書館」という意識が強い傾向にあるように思われます。
自習室・図書館を推奨する主なメリットは以下のように集約されるでしょう。
- 静かな環境で集中できる。(と思われている)
- 周りも勉強していると自分のモチベーションも上がる。
- 誘惑をシャットアウトできる。
このようなメリットも確かに一理あります。
ですが、実際はデメリットも同じようにあります。

当記事では、自習室や図書館を一切利用しないスタンスからデメリットについて考察していきたいと思います。
自習室・図書館での勉強について考えるべき問題点
そもそも図書館で勉強していいのか:飲食・教材持ち込み・自習禁止の確認
まずは、禁止事項についての確認です。
自習室や図書館でよくある禁止事項として挙げられるのは、飲食禁止です。
飲食禁止は、勉強中の間食や栄養補給を意識している方にとっては大きなデメリットです。
また、スマホやタブレットの使用が禁止されている場合は、ネット検索が使えないという点が痛手です。
さらに図書館固有の問題として、施設によっては教材の持ち込みを禁止しているケース、更には自習室としての利用自体を禁止しているケースもあります。
理由は様々でしょうが、基本的に図書館の座席は「その図書館にある本を」読むために提供されたサービスであると言えます。そこで受験生軍団が座席を占有してしまっては、本来のサービス対象である図書館の本を読みたい人の席がなくなってしまう、というのが大方の理由ではないでしょうか。
逆に、自習スペースが別に設けられている図書館、あるいはそもそも自習もウェルカムという図書館もあります。
よって、「図書館で勉強していいのか」という点については、個々の図書館のルールを事前に調べることが前提です。ルールがよく分からなければ、直接質問してみるのも一つです。

そもそも禁止事項を確認せずに何気なく施設を利用していたという方は、トラブルになる前に今一度チェックしてみましょう。
移動という時間・労力・費用のコスト
場合によって大きなデメリットとなるのが、移動に掛かるコストです。
これは、学校や塾のついでに利用できる自習室・図書室であれば無関係の話です。
ですが、わざわざ出かける必要のある場合には現実的なデメリットとなります。
ビジネス的に考えると、移動にかかる時間・労力・費用はそのままコストになります。もちろん片道だけでなく往復分のコストになります。
これらは自宅学習であれば本来は一切掛からないコストですから、もしも自習室・図書館で勉強するために遠出をしているのであれば、再考することをオススメします。
ピンと来ない方は、「その時間・労力・お金を使ってでも自習室や図書館を利用した方が本当に得なのか」という観点からコストパフォーマンスを考えてみると良いかと思います。
例えば、『勉強のために数十分掛けて図書館に通っている』という話を聞いたことがありますが、往復にすると移動だけで1時間以上掛かる計算になります。その中には移動疲れも含みます。
こうしたケースで考えるべきは、『往復1時間以上掛けてもお釣りが来るだけのメリット』がその図書館にあるのか、という判断基準です。
もちろん、その上でも『自習室・図書館を使うメリットのほうが大きい』と考えるのであれば、それはそれで一つの判断です。

大切なのはコスト意識です。結論はケースバイケースで変わります。
周囲に配慮することで行動が制約される
また、周りの迷惑にならないように配慮することで行動が制限されるという点も問題です。
分かりやすいのは飲食です。飲食禁止されている場合はもちろん、特に禁止されていない場合であっても、包装や咀嚼音などの物音が出ますし、臭いもあるかも知れません。
また、ヘッドホン・イヤホンの音漏れはトラブルの定番ですので、密閉性の高いものやカナル型イヤホンなどを使った方が無難でしょう。
他にも、キーボードや電卓のタイピング音、または、咳払いなどの無意識のクセが他の人の邪魔になる場合もありえます。

完全個室であれば悩む必要はありませんが、そのような設備には人数制限や利用料などのハードルがあります。
他の利用者次第で学習環境が左右される、『うるさい人』の存在
先ほどの話とは反対に、他の利用者の影響をダイレクトに受けるという点も大きなデメリットです。直球で言えば、いわゆる『うるさい人』の存在です。
この辺りは、普段から自習室や図書館を利用している方ほど実感している部分かも知れません。
騒音に無頓着な人も居るでしょうし、無自覚に音を立てている人も居るでしょうし、寝息を立てている人もいるかも知れません。
誰でも利用できる図書館であれば、「イレギュラー」(婉曲)との遭遇率が高くなるかも知れませんし、自習室であれば常連のマナーが悪いというケースもあります。
そのような人に対してどこまで真剣に対処してくれるかは管理側次第ですし、常に対処してもらえるとも限りません。一方、自分で注意をすればさらなるトラブルに発展するリスクもあります。
つまり、他人次第で学習環境としてのクオリティが変わってしまうということです。

自習室や図書館はあくまでも公共の場である、というのが根本です。
安定性という点では自宅の方が遥かに分があるかも知れませんが、それも家庭の状況などで変わってくるためケースバイケースです。
もしも自宅が戦場のような騒々しさであれば、許容できるハードルも遥かに緩くなることでしょう。
静かすぎる環境が本番環境に近いとは限らない
幸運に恵まれて、静かな学習環境を確保できたとしましょう。
果たして、静謐な環境こそが本当に「理想的な学習環境」と言えるのでしょうか。

えっ?静かな環境ほど勉強には良いんじゃないのですか?

いえ、人によっては吉にも凶にもなります。
私の経験上、『静かな環境じゃないと勉強に集中できない』という方が一定数います。
確かに実力を伸ばす段階であれば、より学習効果の上がる環境を求めるのは合理的です。
ですが、試験本番での環境を想定した場合、本当にそのままで良いのでしょうか。
場合によっては、試験中も大きな騒音を発するような受験生も居ます。もしかすると自身のすぐ隣りの席になってしまうかも知れません。
あるいは、周りで工事が行なわれていて、不可避的に騒音が入ってくる場合もあります。立地によっては、自動車の騒音、飛行機の音、人の騒いでいる声なども入ってきます。
このような外的要因は自分ではどうしようもない部分です。
そこでは、「静かな環境じゃないと集中できない」とは言っていられません。
ですので、神経質な方ほど「本番こそイレギュラーが付き物」ということを念頭に置いた方が良いかも知れません。

メンタルトレーニングも勉強のうちです。
※なお、騒音が著しく気になる場合は、「聴覚過敏」に該当するケースもあります。あまりにも音が気になるという方は、病院で検査などを受けた方が良いかも知れません。
一人エア授業や音読ができないという致命的デメリット
そして、個人的に最大のデメリットだと思うのは、前回記事で紹介した一人エア授業ができないという点です。
一人エア授業は、日頃から利用している人には分かるかと思いますが、アウトプット学習として極めて効果の高い手法です。
これは、音読を学習に取り入れている方にとっても同じ話です。

私にとっては、この一点だけでも自習室や図書館を利用しない理由になるほどの致命的なデメリットです。
これらも完全個室型であれば解決はしますが、もちろんコストもかさむことでしょう。
※周りを無視して共有の自習室や図書館で一人エア授業や音読をするのはやめましょう。
家で勉強できない人は自習室・図書館で勉強できる…とは限らない
「家で勉強できないから自習室や図書館で勉強しよう」と思っている方にありがちな盲点があります。
それは、「自習室や図書館ならば勉強できる」とは限らない、ということです。
学習環境はあくまでも外的要因です。環境を変えたところで、自分自身の内面が急に別人のように変わるわけではありません。
※ただし自習室・図書館が「意識を切り替えるスイッチ」になる場合は話は別です。

環境を変えても勉強に集中できないのであれば、自分自身の学習スタイルやマインドから見直す必要があります。
自習室・図書館で集中できないなら利用しない
以上のように、人によっては聖域化されがちな自習室・図書館での勉強でも、デメリットは多数あります。
学習環境に絶対はありません。
私が見てきた人の中には、自習室で勉強することそれ自体が目的化しているような方もいました。
確かにそれで「結果として」勉強が習慣化するのであればそれでも構いません。
ですが、こんな疑問も見受けられます。
『自習室での勉強がなかなか集中できなくて捗らないのですが、どうすれば良いのでしょうか?』
――自習室や図書館といった学習環境は手段に過ぎません。
他人の意見は一切関係ありません。
自習室や図書館が『自分自身にとって』勉強が捗らない場所であれば、利用しなければ良いのです。
逆に、カフェテラスであろうと大自然の公園であろうと自宅のリビングであろうと、自分にとって勉強が進む場所であればそれで良いということです。

自習室じゃ勉強できないし、かといって家じゃ勉強しないし、外に出たら遊ぶし。

それは環境ではなくあなた自身の問題ですよね。
まとめ
カンタンにおさらいすると、自習室や図書館を利用する際には以下のようなデメリットが考えられます。
- 禁止事項に従う必要がある。
- 移動にも時間・労力・費用のコストが掛かっている。
- 他の利用者に配慮することで行動が制約される。
- 他の利用者次第で学習環境が悪化する。
- 逆に静かで理想的な自習室の場合は試験本番のイレギュラー対策にはなりにくい。
- 一人エア授業や音読が難しい。
- 条件の良い自習室は料金や人数制限のハードルがある
逆に言えば、こうしたデメリットがクリア出来るならば自習室や図書館も良い選択肢になるということでもあります。
こうしたポイントは、これから学習環境を探す方にとっても、判断基準として役に立つかも知れません。
学習環境というのは手段であって目的ではありません。
勉強の目的は、自分自身が成長することにあります。
もしも現在の学習環境に不満があるならば、先入観を捨てて環境を再検討することをオススメします。
その際に大切なのは、「コスト・デメリットよりもメリットの方が大きいか」という観点です。
そして、どのような環境でも一長一短や合う合わないの部分がありますので、他人の意見は参考に留めつつ自分で比較検討していきましょう。

ただし、外的な環境を整えることも大切ではありますが、その上でどれほどの学習効果をあげられるかは自分次第です。


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