
将来の夢なんて言われてもわからないよなあ……正義の味方とか地球征服とかはもういいし。

うーん……文系かな?学部とか職業とかはよく分からないけど。
将来の夢、進路希望、職業といったものは、避けては通れない人生選択です。
加えて、人生の目標は長期的な努力のモチベーションにも繋がります。
一方で、「特にやりたいことも無い」という方が非常に多いのもまた現実です。

私自身も、特に将来の夢など無い、冷めた学生でした。
当記事では、将来の人生選択に悩んでいる方へのヒントとなるような話を紹介していきます。
様々な観点から論じていきますので、何らかの参考になれば幸いです。
(追記)以下は本田圭佑さんのツイートですが、私も同意見です。
目標設定は人の成果に想像以上に影響をもたらす。そこで大事なのが目標設定の前に夢(目的)を見つけること。
どちらも簡単ではないけど、自分で考えることから始まる。
— KeisukeHonda(本田圭佑) (@kskgroup2017) May 5, 2019
将来の夢が努力に結びつく体験談

まずは、私が実際に見てきた様々な人たちの実例を参考に考えてみます。自然科学・人文科学・社会科学それぞれからご紹介します。
理系男子、科学実験が好きだからこそ研究にも意欲的
まずは、自然科学系、いわゆる理系です。
例えば、私の同年代で化学系専攻の方はこんな感じでした。

それにしても夜まで残って実験とか研究とかよく続けられるなあ。まるで修行僧みたいだ。(直喩)

えっ?だって実験って楽しいじゃん。もう昔からアルコールランプ触ってるだけで楽しくなっちゃって。

いやあ、『好きこそものの上手なれ』だなあ。
続きまして、気象学専攻の方のケースです。

(前略)いやあ、学会レベルでも気候変化の問題は分からないことだらけなのですね……大変ですねえ、頭が上がりません。

いえいえ、研究はとても楽しいですからね。

ただ、天気図やデータなどを読み込んでいく地道な努力も必要でしょうし、本当に骨の折れる作業ではないですか?

いえいえ、天気図を眺めているだけでも楽しいですから。

いやあ、『好きこそものの上手なれ』ですね。
あとは、生物学専攻の方は「観察実験が好き」とのことでしたし、工学部専攻の方は「昔から機械いじりが好きだった」と言う話も実際によく聞きます。
数学好きの方であれば、日頃から数学を趣味としてパズルゲームのように取り組んでいたりすることも多いです。
彼らに共通するのは、興味関心の方向性と専攻が一致しているという点です。
その中でも自然科学は幼少期の段階から興味関心が特に分かりやすいように思います。なぜなら、文系学問に比べて対象がより物理的・客観的に捉えやすいためです。
もちろん特に興味関心も無く理系に進むケースも多々ありますし、また特定の分野に興味があっても就職の需要を考えて隣接分野に進むケースもあります。
ですが、もし琴線に触れる自然科学分野があるのであれば、そこを軸として興味関心の方向性を探って拡げることもできます。

ちなみに先生は実験の授業とか楽しいと思わなかったのですか?

すこぶる興味ないですので全部他の人にやらせていました。
近年では学際的な学部(分野横断的な学部)も増えてきていますし、情報系(IT・プログラミングetc)も大学によっては理工学部とは全く別枠の学部として設立されていたりもします。
ですので、まずは様々な分野・選択肢を知ることが第一です。
ただ単に「どのような分野があるのかをそもそも知らなかった」がゆえに方向性が分からなかった、というケースも往々にしてあります。
筋骨隆々の柔道家が高3から考古学者を目指して猛勉強
次に、筋肉モリモリマッチョマンのK君の話をご紹介します。
K君は文武両道の柔道家だったのですが、文武両道とはいえスポーツの方に掛ける比重が高かったように見受けられます。何よりもその鋼の肉体が全てを物語っていました。
そんなK君は、高3で柔道部を引退してから激変しました。
K君はスキマ時間を見つけては山川の用語集で真剣に暗記学習をするようになりました。それも、頻度①まで全て網羅していました。
山川用語集の頻度①と言えば、私立文系の最高難度でも出るかどうかといったレベルです。
そこで彼に何があったのか尋ねてみると、『考古学者になりたいという夢ができた』とのことです。
そこからのK君は、まさにモチベーションの塊でした。社会はもちろん、他科目も懸命に努力し続けていました。
K君から受けた示唆は非常に多いです。
第一に、将来の夢は急に生まれることもあるということです。
第二に、将来の夢が短期間で人を劇的に変えうるということです。
そして何よりも感じたのが、一つの目標に向かって一心に努力する時の勢いです。
実際にそのような人間を目の当たりにすると、『やりたいこと』に向かって突き進む時のモチベーションは小手先のモチベーションアップ手段とは根本的に異なることが分かります。

でも、その『やりたいこと』が無いわけだが。

私も冷めたタイプですのでそれはよく分かります。だからこそ何かやりたいことが見つかりそうな時は逃さず掴むことが重要です。
数学苦手な文系高校生、適正に合った方向性を見つけ成績が大幅アップ
最後に、私が個別指導で数学を担当していた高校生C子さんの話を紹介します。
C子さんはとにかく数学に苦手意識を持っていました。成績も、平均点50点のところを40点前後といった具合でした。
C子さんは自学自習も真面目に出来るタイプだったのですが、いかんせん数学は努力が結果に結びつかず、辛さを感じているように見受けられました。
しかし、話をしているとC子さんは非常に理知的で、法学部の私にとって非常に親近感を覚える思考様式の持ち主でした。法律系の論文のように、言語ベースで一段ずつ緻密に論理を積み上げていくようなあの感じです。
……というのは本人に説明するためのロジックで、実際は私の主観からしても法学部向きなタイプだと直感しました。(各学部の学生には何となくカラーの違いがあります。)
そこで私は、思い切って言語的な論証を逐一書いて数学を理解するよう指導しました。
一般的な高校生の場合は、計算問題よりも言葉で証明を書く方が難しいというケースが多いはずですが、C子さんの場合は全く逆であろうという洞察からの方針です。
想定通り、C子さんは言語的な論証過程を通じて急速に数学の理解が進みました。
そして、結果的に平均点マイナス10点前後の位置から、一気にプラス10~20点まで急上昇しました。それも1度だけのマグレではありませんでした。
この過程で数学への苦手意識も無くなったのですが、C子さんにはもう一つ大きな収穫がありました。
それは、法学部への進学を意識するようになったことです。
私の方から法学部に勧誘するようなことは無かったのですが、実際に私の示した方向性とC子さんの思考様式が一致したという事実が本人にとって非常に大きかったように思われます。
それからのC子さんは、法学部という目標を意識することで、数学だけでなく学習全般に対するモチベーションが目に見えて向上しました。
ちなみに大学受験から先の「具体的に何をやりたいか」「どんな職業に就きたいか」といった部分は未だハッキリしないようでした。
それにもかかわらず、将来の夢自体は無くとも「自分の方向性」を見出したことでC子さんの目的意識は格段に変わりました。

先ほどの柔道家K君と同じく目標も大切ですが、C子さんの場合は本人の適正に合致した方向性という部分が重要なポイントです。
※この点に関しては、自己分析ももちろん大切ですが、それと同時に、信用できる第三者的な視点からのアドバイスも役に立つということでもあります。
将来の夢が持つ具体的な学習効果、モチベーションの好循環

先ほどの体験談の中でポイントは複数出てきましたが、ここで将来の夢を具体的な学習効果から再認識してみましょう。
勉強を続けるにあたって重要となるのはモチベーションです。
カンタンに言えば、『よし!勉強するぞ!』というメンタルです。
受験勉強や難関の資格試験は、いわばマラソンに喩えられます。
1年単位のスパンで試験勉強を続けていると、どうしてもメンタルの波があることに気付きます。……というよりも、メンタルに振り回されて勉強が捗らずに困っている方が実に多いことと思います。
それに対して様々なモチベーション向上法が巷にはありますが、場当たり的な対応ではなかなか続かないこともまた事実ではないでしょうか。
そこで大切になってくるのが、より根本的な目的意識を持つことです。
そしてその代表例こそが「将来の夢」です。
将来の夢というものをもっとドライに合理的に表現するならば、それは「長期目標」です。
C子さんであれば、法学部受験までの2年間の目標になりますし、入学後には更に具体的な選択肢が拡がっていきます。
考古学者が夢のK君や研究好きな知人のケースでは、そのまま人生全体を通して追い求め続ける夢にすらなりえます。
日々の勉強においては短期的なモチベーションも大切ですが、長期的な目標というのはより根本的な部分から勉強するモチベーションに結びつきます。
そして、懸ける思いが強ければ強いほどブーストが掛かります。
モチベーションが高まると、親や先生に言われなくとも自発的な学習が進みます。
自発的な学習は、集中力の強化に結びつきます。試行錯誤も積極的に進めていくことでしょう。
すると、成長速度も上昇していくことでしょう。そうなると成功体験を重ねて自信が高まり、更にモチベーションが上がります。
そうして、将来の夢を起点としてモチベーションの好循環が続いていくのです。

……で、その将来の夢が無いわけだが。

その点については次の段落で説明します。
将来の夢の持つ『効果』についてはこのように合理的に説明できますが、将来の夢それ自体を見つけ出すのは合理的な計算とはまた違った性質のものです。
だからこそ、自分自身の興味関心や価値観をよく自己観察して把握することが大切です。
夢の大きさなどは関係ありません。
むしろ、日々の生活の中で小さな興味関心も見逃さないことが可能性を拓くキッカケになるかも知れません。
将来の夢が見つからないなら大雑把な方向性で良い

それでも将来の夢が見つからない人向けにアドバイスをします。
私自身の体験談、夢は無くとも『適正の方向性』を自己分析し知ること
そもそも、私自身が「将来の夢がない」という冷めた学生の筆頭でした。
そして今でも夢はありません。
では私がなぜ法学部に進学したかと言うと、「つぶしが利くから」という親戚からの薦めが一番の理由です。
具体的に言うと、法学部は各種資格試験・公務員試験・民間就職のいずれにも容易に方針転換しやすい学部です。そして、そもそも法律は社会の中のあらゆる分野に関わってきます。
(※ロースクールを目指す司法試験組は法学部の多彩な選択肢の中では一部に過ぎません。)
率直に言ってしまうと、打算です。将来の夢とは真逆の、合理的思考に基づく選択です。
そして結果的に、私は一つの専門を決めずそのまま社会科学系統のジェネラリスト路線を進み、今に至ります。
ですが、今にして思えば、『ジェネラリスト志向の法学部生』という像は自分の適正の方向性と完全に一致していました。
- 幼少期から「理屈っぽい」とよく言われていた。(法学部向き)
- 幼少期から時事問題・社会システムに関心を示していた。(大人になって初めて気付く)
- 実学志向で合理主義者。(法学部向き)
- 国語が大得意でありながら地歴・文学方面には何の興味も無かった。(人文系に向かない)
- 数学も文系としてはそこそこ出来る方であったが、メインに据えるほどではなかった。
- ノンジャンルで何でもありのスタイル。(スペシャリストよりジェネラリスト向き)
もしも今の私が当時の私から進路相談を受けたとすれば、今と全く同じ道を推奨します。
ですが、これほど方向性がハッキリしていたにもかかわらず、こうして客観的に判断できるようになったのは大学卒業してからの話でした。
今にして思えば、当時の自分はまるで自己分析が出来ていませんでした。

将来の夢など無くても、方向性さえ一致していれば道筋は見えてきます。問題は、その方向性を見出す為の自己分析です。

何でもアリっていうのも方向性の一つなのですね。

慶應のSFCを端緒に、複合的な学部も全国的に拡がっていますからね。情報系学部も、単純に文理で分けられない側面が多々あります。
まずは何よりも情報を知ることが第一歩です。知らないことには選択のしようもありません。
将来への大雑把な方向性でも学習目標や志願先の選択に役立つ

でも、ぶっちゃけ自分の方向性とか言ってもよく分からないなあ。

まずは本当に大雑把な方向性を探るだけでも全然変わりますよ。
例えばゲーム好きの方であれば、大雑把に考えてもこれだけの方向性が見いだせます。
- ストーリーの方に強い関心が湧く:ライター、文学系(小説や文学にも興味が向かえば)
- 歴史モノに強い関心が湧く:そのまま歴史学系、中国系なら中国語方面も
- システムの効率化・合理化が好き:実学的な方向、あとは理系か社会科学か情報系か
- 経営シミュレーション、数字好き:経済・経営系
- ゲーム制作・プログラミング自体に興味:情報系、これは小中学生からでも実践できる
- アルゴリズムに興味:基本は情報系や工学系、だがIT時代では文理を問わず必須の能力
- ゲーム自体が大好き:ライター系やゲーム会社
※これはあくまでも大雑把な一例で、実際は個々人ごとに自己分析するのが第一です。

私の場合はアルゴリズム的思考重視の効率主義ゲーマーでした。そこに今の経営・ビジネスの方向性が表れていました。
逆に考えると、機械にすこぶる興味ないのに工学系には進まないはずです。
文学に興味がないのに文学部文学科には行かないはずです。
数学アレルギーなのに数理経済学や統計学のガチ勢は目指さないはずです。

こんなの、当たり前の話じゃないの?

この程度の分析でも将来の方向性は一つずつ絞れているのです。こうした小さな分析を積み重ねることで、次第に選択肢が見えてきます。
選択肢が大体絞れてきたら、あとは残った選択肢から大体の優先順位をつけていくだけです。
そして、大筋で絞った選択肢がそのまま学習目標となります。受験で言えば志願先になります。
将来の夢がなくとも、こうして当面の目標が見えてくるだけでも学習には非常に有利に働きます。
もちろん志望先の選択にも役立ちますが、それだけではなくメンタル的にも効果が大きいです。なぜなら、「何のために、どこに向かって勉強しているのか」が分かってくるからです。

先も見通せない状態で努力を続けるのは容易ではありません。その点、進むべき方向性が分かればあとは目標に向かって走るだけです。
方向性を持ち将来へのビジョンを創る
将来の夢がないならば、学部・学科を探ると良いです。
学部・学科が分からないならば、科目や単元との相性を探るのも一つです。
「どれが一番マシか」というレベルの分析でも一向に構いません。
あるいは、勉強以外の分野も自由に開かれています。
大雑把な方向性でも良いですので、将来へ向けての何かしらのビジョンを持つことが大事です。
大抵の人間にとっては、どこに向かって進んでいるか分からない状況に置かれるとメンタル的にも不安定になりやすいです。
それだけでなく、何に力を入れて学習すれば良いかという点ですらあいまいになります。
(当記事を見つけて下さった方にとっては非常に心当たりがある部分だと思います。)

『文系が何のために数学を勉強するの?』って話もよくありますね。

文系であっても、経済・統計・IT分野を真面目に学ぶつもりならば数学的思考力は大前提です。

そういう部分って、知らないとどうしようもないですね。

だからこそ「ググる習慣」で情報収集することが大切なのです。
対して、大まかであってもこれから進む方向性が見えていれば学習計画も非常に進めやすいです。
具体的には、長期目標に向けて中期目標、短期目標も設定しやすくなります。(詳しくは次の記事で解説します。)
逆に、そこから短期目標を積み上げていくことで長期的な成果に繋がります。
この論理は、国語・英語のミクロ・マクロ視点と同じような話です。
マクロ視点のアウトラインがあるからこそミクロの文ができますし、逆にミクロの文を積み重ねることでマクロスケールの文章が構成されていきます。
もしもすぐにはビジョンが捉えられないとしても、将来を模索して日々の生活を送ることそれ自体が将来の可能性を拡げるカギになります。
ビジョンの方向性は何でも構いません。
方向性によっては進学コースに進む必要もありません。また、周りの友人知人に同調して普通科を目指したとしても、それが本当に自分にとって最善の道であるとも限りません。
確固たる夢が無いならば、自分の適正・興味関心の方向性に従うのが最も自然な道です。

全ては自分次第です。たとえ家族から強い意向を受けている方であっても、最終決断を下すのは自分次第です。
まとめ
将来の夢があれば、努力するための強い原動力になります。
一方で、将来の夢がない方は、夢というものを無理に探そうとする必要はありません。
ですが、大まかであっても方向性があったほうが何も無いよりも遥かに学習を進めやすいことも確かです。
夢が見つからない方にとって大切になってくるのは、あるかどうかも分からない将来の夢を漠然と探すよりもむしろ具体的な現状の自己分析です。
自己分析とはつまり、自分の適正や興味関心の方向性を探ることです。
そして自己分析と並行して、どのような選択肢・可能性があるか調べていくのがカギです。目的意識がなくても、可能性が拡げられればそれだけでも大きな意義があります。
逆に、自己分析やリサーチをしないと、見つかるものも見つかりません。

もしも何もない砂漠のド真ん中に居たとして、目標地点も無く闇雲に歩き続けると人は同じところを回り続けます。ですが、遠くに大体の目標があるだけでも、進むべき方角を定めることができます。
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