あおり運転の加害者心理に見る被害者意識と誤解~過失も勘違いも運転の常│時事・社会・ビジネス⑬

あおり運転加害者の被害者意識時事問題・社会科学・ビジネスコラム

 

近年において、あおり運転は急速に社会問題化しつつあります

 

その大きな発端となったのは、東名高速道路による死亡事故(というよりも事件)であると言えます。

東名高速夫婦死亡事故 - Wikipedia

 

一方で2019年8月、今度は常磐道であおり運転を契機とした暴行事件が起こったことにより、この問題が再燃しています。

あおり運転 - 産経ニュース
産経新聞社のニュースサイト。あおり運転のニュース一覧ページです。

 

そして、遂に私もあおり運転の被害を受けた……と思いきや、それは思わぬ誤解でした

そうした自分自身の経験から、加害者の被害者意識について考えるに至りました。

 

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体験談:煽りの幅寄せと思ったら善意の注意だった件

 

先日、私が車を運転していたところ、急に別の車が左側面に幅寄せして来ました

 

あおり運転と思ったら善意の注意だった

図のように、後ろの車が私の車の左側面ギリギリに幅寄せしてきたかと思うと、ドライバーの中年男性がこちらの窓をガンガン叩いて何か叫んできました

 

この時の私は、遂に私もあおり運転の被害者になる日が来てしまったと内心ビビっていました。

ですが、そのドライバーの中年男性の表情を見ていると、怒りというよりもしきりに何かを訴えかけているように見えてきました。

 

そこで意を決して窓を開けたところ、意外な言葉が返ってきました。

「給油口が開いとるよ!」

 

実はこの少し前にガソリンを給油していたのですが、私の過失で外側のカバーが開きっぱなしになっていました

 

幸い内側のキャップは閉まっており、給油して数分後に指摘していただけたのですぐに対処できました。

ですが、京アニ放火事件でも浮き彫りになったように、ガソリンは揮発性が高く、大気中に放出されやすいという性質があります。

そこで、もしもキャップまで開きっぱなしの状態で給油口の近くに火気があったとすれば……引火して爆発していた可能性も否定できません

 

実際、この件で何かしらのトラブルに繋がっていたならば、私の方が加害者となっていたかも知れないということです。(過失責任)

 

なお、指摘してくれた中年ドライバーはその後も、「自分が(???)したら(???)になるとよ!」と言ったことを述べていましたが、気が動転していて(&長崎弁リスニング能力不足で)聞き取れませんでした。

ですが、明らかにこちらの身を案じてわざわざ注意してくれたということは確かです。

 

それにもかかわらず、最初は誤解して自分のほうが被害者かも知れないと感じてしまったということです。

 

最初は気付けなかったというのは仕方ないにしても、自分自身に過失があったことには違いありません

 

現実としては、正当に注意した側が逆恨みで暴行を受けるリスクもあります。そうしたリスクを恐れずにわざわざ注意してくれたドライバーには感謝しかありません。

 

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あおり運転の加害者とドライバーの被害者意識を巡る問題

 

今回の私の体験から思い至ることは、あおり運転の加害者側の被害者意識についてです。

 

基本的には個別具体的なケースによりけりですが、少なからずあおり運転の動機として「先にやられたからやり返しただけ」という意識が挙げられます。

例えば東名高速道路の事件では、加害者がルール違反をしていたにもかかわらずそれを注意した被害者に逆上して犯行に及んだ、ということです。(この事件の場合は誤解云々の次元とはまた違いますが)

 

あるいは、最近発生した常磐道あおり運転の容疑者は、昨年2018年には別の事件を起こしています

 

関係各社の報道も踏まえてカンタンにまとめると、以下のような事件です。

昨年(2018年)、例の容疑者が客としてタクシーに乗るや、目的地もなく無理やり12時間運転させ続けた(実質的にタクシー運転手を監禁しているのと同じ)。そうしてタクシーを無理やり走らせつつ、自分は後部座席で実際は煽りも何もされていないにもかかわらず『周りの車に煽られた、助けてくれ』と110番通報を繰り返していた

 

自分がタクシーの客で、タクシー運転手を監禁しておいて、あおり運転を通報?どうしてこんなことを?

正直なところ、書いている私にも理解できません。

 

一つ言えるのは、ここにも過剰な被害妄想の一端が見て取れるということです。

ちなみにこの事件の顛末としては、例の男自身が監禁罪の容疑で警察に逮捕されました。さながら「自分自身を被害者と思い込んでいる加害者」といったところでしょうか。

 

なお、こうした事件の加害者の場合は極端なケースではありますが、一般ドライバーにも少なからず関係する問題でもあります。

調査によれば、ドライバーの97.4パーセントが、「運転マナーを意識している」と回答しています。ところが、同時に94.3パーセントのドライバーが「あおり運転をされたことがある」と回答しています(日本自動車連盟JAF平成28年)。

(中略)

何気なく追い越しただけなのに、相手が感情を害し、過剰反応することもあるのでしょう。怒っている人のほとんどは、自分は悪くないと思っているものです

あおり運転をなぜするのか:危険運転の心理(碓井真史) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

記事前半でご紹介した私の体験はやや特殊な事例ではありますが、もしもあそこで窓を開けずに逃げていたならば、「あおられて怖かった」で終わっていたことでしょう。(後で給油カバーを見て察しがつかなければ)

そうすると、実際は煽られていないにもかかわらず勘違いして「あおり運転をされたことがある」と回答した94.3パーセントの中に入っていたかも知れません。

 

そうして、誰もが日頃から大なり小なり誤解を積み重ねているのかも知れません。

 

あおり運転に発展するようなケースでは、このような被害者意識に「車の密室空間では気が大きくなりやすい」という要素が掛け算されることで、更にあおり運転が助長されているのではないでしょうか。

 

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あおり運転の被害者にも非が無いとは限らない

 

ここで注意すべきは、「果たしてあおり運転の被害者は本当に悪くないのか」という問いです。

 

例えば、以下のような迷惑な運転に遭遇したことのあるドライバーは多いのではないでしょうか。

 

  • ノロノロ運転:追い越し車線で制限速度60km/hのところを40km/h未満で走り続けて1人で渋滞を引き起こす。(実話)
  • フラフラ運転:左車線をはみ出し、右車線をはみ出し……と延々と左右にふらつきながら運転。(実話)
  • ながらスマホ運転:スマホ片手に運転して、明らかに挙動がおかしい。青信号になっても一向に動き出さない。(実話)
  • あおりハンドル:左折する際に一旦右側に大きく膨らむことで、隣の車線に大幅にハミ出す。(大型車両ではなく軽自動車でも)
  • ウィンカーを出さずに車線変更し割り込み、2車線・3車線をまたぐケースも。(危険な割に日常茶飯事)

 

「あおり運転の被害にあった」という人が以上のような運転を常日頃おこなっていたとするならば、一面的に被害者とは言い切れない側面もありますむしろ周りの方が迷惑運転・危険運転の被害者かも知れません

あるいは、追い抜く相手を覗き込むクセがあるとするならば、相手が「ガン飛ばして挑発された」と感じてもおかしくはありません。まさに『李下に冠を正さず』が当てはまります。

 

もちろん、それでも煽って良いことにはなりません

とは言え、私自身も含めて一般ドライバーの一人ひとりが自分自身を省みることが大事であることは確かです

 

その上で、自衛できる範囲で自衛することもまた求められます。(相手が殴り込みに来ても窓もドアロックも開けず警察に通報するなど)

 

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まとめ:思いやり・ゆずり合いの安全運転

 

まとめに替えて、警察庁はホームページ上で以下のように注意喚起をしています。

 

この注意喚起の最後は、以下のように締めくくられています。

 車を運転する際は、周りの車の動きなどに注意し、相手の立場について思いやりの気持ちを持って、ゆずり合いの運転をすることが大切です
また、交通事故防止のためには、前の車が急に止まっても、これに追突しないような安全な速度と車間距離をとることが必要です。
正しい交通ルールを守った運転で、皆が安全・快適に通行できる交通環境をつくりましょう。

 

使い古された表現ですが、結局の所、1周回って思いやり・ゆずり合いの精神が基本であるということです。

これはあおり運転の事件事故に発展するようなケースに限らず、一人ひとりの日常的な積み重ねによって成り立つと言えます。

 

そこに加えて、私が今回の経験を通じて重要と感じたのが、誰もが誤解・勘違いしているかも知れない」という意識です。

そうした意識を持つことで、「他人を責める前に我が身を振り返る」ことに繋がり、結果として無用なトラブルを減らすことが出来るかも知れません

 

※なお、当記事で述べたような意識付けは運転中に限らずコミュニケーション全般においても重要な要素です。

 

なるべく加害者にも被害者にもならないようにする」ような運転を心掛けたいものです。

 

その上で、あおり運転の厳罰化と被害者支援が進むことも願います

 

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